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送電が困難な地域にもクリーンなエネルギーを! 三菱重工が挑戦する「トリプルハイブリッド発電」とは?

2019.12.03 (火)

 
 2019年の9月、10月は台風が猛威を振るい、被害の大きかった千葉県を始め、各地で長期間の停電が問題になりました。現在の社会を維持するために、電気はなくてはならないエネルギーです。そしてそれは、日本だけではなく、世界全体でもいえることです。

 その電気を世界中で、安定的かつクリーンに使用できるようにと、三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社は、「トリプルハイブリッド発電」というシステムを研究・開発しています。一体どのようなシステムなのでしょうか!?

 現在も開発に携わっている同社のエンジン・エナジー事業部技術部の田中政之さんに、「トリプルハイブリッド発電」の仕組みだけでなく、同システムがもたらす未来についても、聞きました!
 

人口増加による発電量の増大を予測! 将来的に深刻な問題に!?

 
 まず、皆さんはオフグリッド地域というのをご存知でしょうか?

 簡単に説明すると、発電所からの送電が通っていない地域の事です。アフリカの都市部から外れた村やフィリピンやインドネシアの国土の中で、発電所を置けないほどの小さな島などが「オフグリッド地域」と指定されています。そのような地域でも、最低限の電気は必要なので、1000キロワット程度のレシプロ発電機などを使用してライフラインを維持しています。現状ではそれでも深刻な問題はありませんが、これが10年、20年後となると大きく変わってきます。
 

 
「アフリカなどではオフグリッド地域の人口が増加し、発電機に需要が跳ね上がると予想されています。具体的な数字を出しますと2040年度には、電気の使用量が38テラワットアワーも伸びるといわれています。仮にこの電力量を既存の発電機でまかなうとしますと、約1万台もの発電機が必要になってしまいます」(田中さん)

 ちなみに38テラワットアワーという数字に馴染みがない人が多いと思います。単位が大きいので国単位の話になってしまいますが、ニュージーランドの2018年の年間電力消費量の平均が39テラワットです。つまりこのままオフグリッド地域に人が増えると、1国分の電力が不足するという訳です。
 

自然エネルギー、発電機、エンジンの3つを組み合わせる「トリプルハイブリッド発電」

 
 レシプロ発電機というのは天然ガスや軽油を使用します、つまり化石燃料によって発電するのです。発電機の需要が伸びることになると、脱炭素社会が遠のくどころか、将来的には、オフグリッド地域のエネルギー供給問題が大きな課題になる可能性があります。

「やはり『化石燃料を使い続けていていいのか?』という問題になります。脱炭素社会を目指すなかで、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーを使い、発電機にリンクさせていこうと、この『トリプルハイブリッド』というシステムに目を向けたのです」

 このシステムの特徴は「トリプル」の名前が示す通り、自然エネルギーとバッテリー、発電機の組み合わせにあります。1000キロワット相当の発電力を持つソーラーパネルを置き、日中はその電力を供給します。日が暮れて夜になると、今度は発電機から給電が始まります。
 

▲中央に位置する装置「COORDY(コーディー)」が、太陽光、蓄電池、エンジンの発電量を気候や時間帯によってコントロールし、電力を供給している

 

「バッテリー=蓄電」ではない! 出力不安定な太陽光発電の調整役も担当! 

 
 そして、このシステムで最も注目すべきポイントが、バッテリーの役割です! 普通ならば蓄電の為に置いていると思ってしまいますが、実は違うそうです。
 

 
「バッテリーは電気を溜めるために使う目的では導入しておりません。どちらかというと電源の安定化のためです。太陽光発電というのは、電力出力が不安定で、条件が変わると出力が大きく変動するため安定した電源が供給できないのです。電源を安定化するために、蓄電池の出力をどのくらい変えればいいのか、快晴の日、曇りの日、雨の日はどうなるのか、使用電力量が急激に変化したらどうなるのかほぼ毎日実験の繰り返しですね。この前の台風(19号)の前日、風の強く雲の流れが早い日も可動させました」

 さらに太陽光発電においては、「発電しただけでは供給できない」という部分が、大きな弱点とされており、実際に日本でも問題として表面化したケースがあるそうです。

「昨年9月に起きた北海道の地震(北海道胆振東部地震)では停電中に『近くにソーラーパネルがあるのに、なぜ電気がこない?』という苦情の声があったそうです。通常の太陽光発電は発電した電気を送るために送電網を使っているので、停電が発生した場合は、そうなってしまいます。しかしこのシステムだと停電した際も安定した電源を送電出来るので、その心配がありません」
 

 

オフグリッド地域だけではなく災害時でも役立つ可能性も!

 
 完成すれば、オフグリッド地域だけではなく、災害時でも活躍できる「トリプルハイブリッド」は、SDGsの7番「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」、11番「住み続けられる街づくり」に関わる技術といえるでしょう。
 

 
 この装置1基で1000キロワットの発電量を賄えるように考えているそうで、その発電量は1000世帯の家族を賄える電力量に相当します。なお、この1世帯分の計算は、一般的な日本国内の家庭電力の数字を元にしているので、オフグリッド地域のような電気使用量が少ない地域では、もっと多くの人々の生活を助けることができると予測されています。

 田中さんもこのシステムのテストを進めていくなかで、社会貢献の重要さを感じたそうです。
 

 
「“地球にやさしい電力を提供する”というのは簡単ですが、そのためには、技術を開発していかなければいけません。どうすれば社会に貢献することができるのか、日々考えて仕事に向き合っています。大学生の方も、今後どういった技術が社会に役立っていくのかを常に考え、社会人になってから活躍できる人材に成長してほしいと考えております」

 現在、実用化に向けて、使用予定地域でのテストなどを繰り返している「トリプルハイブリット発電」システム。まだまだ課題は数多く残っているそうだが、研究や検証は着々と進んでおり、近い将来実用化されるそうです。

三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社

http://www.mhiet.co.jp

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