大学生ネットワーク
学⽣服から考える 変遷と直⾯する問題
成蹊大学新聞会
2019.09.18 (水)
近年、ジェンダーに対する世間の関心が高まっている。特に学生服は、ジェンダー問題における一つの争点であろう。そこで制服の変遷と現代の課題について、成蹊大学文学部の今田絵里香准教授に伺った。
制服が男女で異なる原因は、近代教育に由来する。1870年代、男子学生に軍服を模した詰襟の制服が取り入れられた。一方で、女学生は官立女学校でズボン状の「男袴」の着用が認められる。しかし、男子と同じものを着ることへの批判が相次ぎ、後に廃止されることとなる。75年には先の批判を受け、跡見女学校がスカート状の「女袴」を導入。他の女学校もこれに倣った。
その後、第一次世界大戦下の欧米では、戦地に赴く男性に代わり、女性が労働を引き受けるようになった。この事実は日本国内に影響を与え、日本女性にも強い身体が求められ始める。それに伴い、1923年から動きやすいセーラー服が広まっていく。80年代には「ジェンダーと教育」に関する研究が活発化。制服が生徒に「男性らしさ」「女性らしさ」を押しつけていると指摘され、問題視されるようになる。
現在、制服はLGBTの人々の視点からも批判されている。電通が2012年に行った調査によりLGBTの人々が注目を集め、制服について少しずつ配慮されるようになった。例えば、一部の学校では女子生徒がスラックスを選択可能となった。一方で、男子生徒がスカートを選択できる学校はほとんどない。
ジェンダーやLGBTにまつわる問題は、制服の廃止で解決するわけではない。根本的な原因は服装全般におけるジェンダー規範にある。今田准教授は「規範を変えるためには、社会全体の意識を変える必要がある」と語った。私たちはこの規範について改めて考える機会を設けるべきだろう。
※記事は成蹊大学新聞会2019年7月号(No.318)4面より流用
公式HP「成蹊大学新聞会」
オススメ記事
【首都直下地震に着実な備えを】武蔵野市 市民に防災対策を啓発
大学生ネットワーク 1月1日に発生した令和6年能登半島地震は、人々の防災意識に大きな影響を与えた。大地震に時間や場所の例外はない以上、準備 … 続きを読む
大学生ネットワーク 学生が中心となって構成されている労働組合「ブラックバイトユニオン」。学生による学生のための労働組合である。アルバイト先 … 続きを読む
大学生ネットワーク 法政大学新聞学会は、同大学出身の政治家であり、2020年度に第99代内閣総理大臣に任命された菅義偉氏にインタビュー取材 … 続きを読む
大学教育によってサステナブルな未来は創造できるのか? 武蔵野大学が新設する「サステナビリティ学科」
大学生ネットワーク 2023年4月に新学科「サステナビリティ学科」を開設する武蔵野大学が8月3日、有明キャンパスで記者発表会を行いました。 … 続きを読む
【首都直下地震に着実な備えを】武蔵野市 市民に防災対策を啓発
大学生ネットワーク 1月1日に発生した令和6年能登半島地震は、人々の防災意識に大きな影響を与えた。大地震に時間や場所の例外はない以上、準備 … 続きを読む大学教育によってサステナブルな未来は創造できるのか? 武蔵野大学が新設する「サステナビリティ学科」
大学生ネットワーク 2023年4月に新学科「サステナビリティ学科」を開設する武蔵野大学が8月3日、有明キャンパスで記者発表会を行いました。 … 続きを読む