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若者のための労働組合 学生を使い捨てるブラックバイト

法政大学新聞学会 長谷川桜子

2024.03.12 (火)

 学生が中心となって構成されている労働組合「ブラックバイトユニオン」。学生による学生のための労働組合である。アルバイト先での不当な目にどう向き合うか。法政大学新聞学会は、ブラックバイトユニオン共同代表の荻田航太郎氏に取材した。

Q:そもそもブラックバイトとはなにか
 学生であることを尊重しないアルバイトをブラックバイトといいます。元はネットスラングであった「ブラック企業」から派生した言葉ではありますが、厳密には2010年代半ばに社会学者の大内裕和氏が、在籍していた大学の学生が授業にアルバイトのシフトが入っているため参加できないといったケースが増えたことから定義したものとなっています。勤務先から学業よりもアルバイトを強要され、単位落としたり留年したりといった問題が多発する状態からブラックバイトというものがあるのではないかと取り組みが始まりました。

Q:ブラックバイトユニオンはどのような活動行うのか
 学生であってもアルバイトとして働いていれば当然権利を持っています。学生自身が声を上げてその権利を行使できるよう私たちは活動しています。大事な点は、ブラックバイトユニオンはお助け機関ではないことです。賃金未払いやパワハラなどの労働相談があった際、私たちは相談者の代理として何かをするわけではありません。弁護士であれば代理交渉などをしますが私たちはそういった団体ではありません。労働組合において労働者は自ら声を上げる必要があるからです。

 労働組合として団体交渉の際には相談者と一緒に行い、未払い賃金があれば相談者自身が請求します。私たちは相談者自身が声をあげられるように一緒に戦うというスタンスです。私たちが活動する上で重要視する点は、学生自身が声を上げて問題解決することです。会社が学生をぞんざいに扱う態度を改める関係性を当事者が声を上げることでつくりあげることに重きを置いています。

Q:ブラックバイトの特徴と発生する原因とは
 基本的な特徴は「シフト強要」、「辞められない」、「過剰な責任」の三つです。またフランチャイズ展開の企業が多いです。特に塾や飲食店、コンビニです。これらの特徴は日本の産業構造の変化が起因しています。かつての日本は製造業が中心でしたが現在ではサービス業が中心です。そこから24時間営業のコンビニや飲食店などが参入してきました。ポイントは、こういった新興産業は労働内容が徹底的にマニュアル化している点です。その産業における利益追求の核心はマニュアル化されているため、労働者に経験は求めず、低賃金の労働力をいかに確保できるのかが重要になります。そこで深夜勤務などの無理が効く学生が戦力としてターゲットになるのです。

 学生は10代後半で社会経験が少ないという点で足元も見られています。先述したマニュアル化された仕事内容は店長でもバイトでもできるような仕事です。そうなると、店長と学生の大きな違いはマネジメントする仕事の有無です。店長には労働力を確保し維持管理する、学生から「逃げられないように」するマネジメント能力が求められます。学生バイトを確保できないと店長がシフトに入ることになり店長も長時間労働となるため、学生にシフト入ってもらわないと困るのです。ここからシフト強要が発生します。

 学生がアルバイトを辞めたいと申し出ても辞めさせてくれない現象も原因はシフト強要と同様です。職場に迷惑かかると言って学生の責任感に訴え、それでも辞めますと言うと就職に響く、懲戒解雇だと脅しにかかるのがブラックバイトです。実際は就職にも関係ありませんし懲戒解雇はできませんが、ここで不当な目に遭ってまで辞められない学生の事情もあります。

 一つ目の理由は学生の貧困化と奨学金問題です。学費の高騰や学生の親世代の賃金水準の低下により仕送り額が減少しています。学費と生活費を学生が稼ぐ必要性が高まっているのです。そんな学生にとってアルバイトは、遊ぶためのお金を稼げればいいというものではありません。奨学金は借金であるため借りないでおこうという意識もはたらき、「自発的に」深夜シフトに入る学生の姿があります。二つ目の理由は責任感が高く、人手不足により本当に学生アルバイトがいないと場が回らなくなることを知っているからです。他の理由としては、社会人として自分がやっていけるのかを試す気を持ちながらアルバイトをするというのもあるでしょう。

 これらがブラックバイトの発生する典型的な原因となります。

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