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新たな化粧品向け素材が海洋プラスチックごみ問題の解決をサポート! 開発者が重視するサステナブルとビジネス視点!
2021.01.18 (月)

大阪府に本社を置く日本の大手化学品メーカーである株式会社ダイセルは、2020年10月に開催された国際化粧品技術者会連盟の学術大会「The 31st IFSCC Congress 2020 Yokohama」で、新しく開発した酢酸セルロース真球微粒子「BELLOCEA(R)」を発表しました。この粒子は普段使う化粧品などが与える環境負荷を抑制すると大いに期待されています。
そこで豪田ヨシオ部では、酢酸セルロース真球微粒子「BELLOCEA(R)」の開発に携わった事業推進室研究開発グループの小林慧子さんに、同素材の特徴や開発秘話を聞いてきました!
世界的に進むマイクロプラスチック規制! 進化を遂げる素材!
一般的な化粧品は、粒子の定着や化粧の伸びなどの観点から、アクリルやナイロン、シリコンといった合成系微粒子を使用しています。これらの原料は、マイクロプラスチックによる海洋汚染問題が世界的に叫ばれている中で、自然でなかなか分解できないことが問題視されています。

▲資料、株式会社ダイセルより
そのような背景の中で、化粧品業界においても、環境にやさしい天然由来の素材が求められつつあります。現在、使用する原料に関しては国や企業ごとに自主配慮や規制措置を取っていますが、将来的には世界的に統一の規制基準が設けられるだろうと言われています。
同社では長年、お酢の主成分である「酢酸」と植物由来の「セルロース」を原料とした環境にやさしい素材を研究開発しています。酢酸セルロースの特徴はズバリ、「海洋や土壌で加水分解される」ことです。
その分解期間は1~3年だそうで、海洋中・土壌中で一般的な合成プラスチックより極めて速く分解されます。ちなみに私たちが普段使っているビニール袋は10~20年、ペットボトルなどは完全に分解されるまで約600年かかると言われます。

ただ環境負荷をかけない原料というだけでは、まだ不十分です。今回開発した酢酸セルロース真球微粒子「BELLOCEA(R)」は、ボディクリームやクリームファンデーションなどに配合することで、高い乳化安定性と柔らかな肌触りを付与し、アクリルやナイロンよりも伸びが良いことが特徴です。また、製造する際も、環境保全に配慮された森林の木材とコットンリンター(綿花採取後の産毛状繊維)を使用。CO2や廃液の排出も従来の合成系微粒子より抑えられるそうです。

開発競争も激化! 社会貢献だけでなくビジネス視点も必要!
化粧品原料の業界では同社以外でも、こうしたサスティナブル(持続可能)な原料作りが加速化しており、開発競争も激しくなっているそうです。将来的に自然由来の原料の需要は拡大することが予想されており、社会貢献するだけではなく、業界内で原料供給先としても優位に立てるからです。
「環境に関わる最新技術は、他の企業も開発していますので、結果を出さないと競合他社に負けてしまいます。その中でも、開発へのスピード感はものすごく意識していますね。『BELLOCEA(R)』もサンプルが出来たらすぐにプレマーケティングを実施しました」

▲研究開発している時の小林さん
酢酸セルロース真球微粒子「BELLOCEA(R)」の完成までには、約2年半を要したそうです。これは業界的な開発期間では長い方で、粒子をイチから作る研究だったため時間がかかったのだそうです。

同社では、コスメで活用できる酢酸セルロース真球微粒子「BELLOCEA(R)」だけでなく、シャンプー、リンス、ハンドソープ、健康食品素材、サプリメントの分野でサステナブルな原料の研究開発を行っています。
これらのチャレンジは、会社として持続可能な社会を目指すということ以外に、化学品を扱う企業が抱える悪いイメージを払しょくするという観点もあります。どうしても、大量の化学品を使用し、その過程で大量の廃液やCO2を排出する業種とみられてしまうことが多いからです。そのためクリーンな技術に挑戦している実績が、同社の企業価値を高める効果にもなっているようです。
就活面接では「環境問題に興味がある」と隠さずに言うべき!
開発を担当した入社7年目の小林さん。大学では環境理工学部に在籍し、環境問題に関わる技術の研究をしていたそうです。小林さんが就職活動をしている当時、まだSDGsという社会的に明確な目標はありませんでした。
「私が就職活動をしていた頃は『企業は利益を優先させるため、環境問題への興味を面接などで出すのはあまりよろしくないと…。なので、面接では隠した方がいい』という雰囲気がありました。しかし、今は大学、企業共に環境に関わる問題に直結した研究や企業活動を積極的にしています。今の学生はSDGsについて学び、様々な社会課題を考えることも多いと思います。なので、環境に関わる研究をしたいのであれば、その面を押し出して就職活動をした方がいいと思います」
現在、同社では2030年に向けて「DAICEL VISION 4.0」という第4期長期ビジョンを掲げ、「社会と人々の幸せに貢献する」「地球や人にやさしい方法で実現する」「働く人がやりがいを実感できる」を目指しています。具体的には、会社・工場といった縦割りの枠組みの廃止、バイオマスプロダクトツリーの構成という天然由来原料を使った自然回帰、消費者と協力した問題提起・解決などです。

▲同社の研究所にてSDGs研修会の様子
もはや企業にとって、環境負荷の低い製品や商品を生産するということは、社会貢献ではなく、企業が今後成長していくための手段になっています。同社でもさらなる成長と「DAICEL VISION 4.0」を実現するために、小林さんのような“若い社員のパワー”を必要としています。
大学生のみなさんも、小林さんのように自分の強みを伸ばし、就職活動にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
株式会社ダイセル
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