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「スーパークローン文化財」は世界平和への願い! SDGsイベントを高頻度で開催する「そごう・西武」

2020.08.26 (水)

 
 豪田ヨシオ部は、8月1日~31日の期間にそごう横浜店のそごう美術館で開催されている「東京藝術大学スーパークローン文化財展-最先端技術がつくる未来-」を取材してきました! この展覧会は、SDGs4「質の高い教育をみんなに」と紐付けられています。
 

 
「クローン文化財・スーパークローン文化財 」と呼ばれる複製の作品を展示する狙いはどのようなところにあるのでしょうか。一般財団法人そごう美術館の学芸員・二宮一恵さんに話を聞きました。
 

子ども対象の夏休み鑑賞企画から「大人も」「家でも」学べる企画へ

 
 まず、「スーパークローン文化財」を簡単に説明します。東京藝術大学で開発された技術で、伝統的な模写技術と最先端のデジタル技術に人の手技や感性を取り入れ、文化財を高精度に複製再現したものです。今、世界の文化財を継承する手段として大変注目されています。
 

▲釈迦三尊像の三次元計測している様子(左)、同素材の絵具で彩色して仕上げている(右)
 
「毎年夏休みには、教育委員会と連携して子どものための企画を開催しておりました。体験型の鑑賞であったり、会場内に鑑賞学習の場としてのジュニアルームを開設したり。ところが今年はコロナ禍で、触る・集う企画はできなくなり、さらに子どもたちの夏休みも短縮。1年以上前から準備を進めていましたが、開催3ケ月前に大幅な企画の変更を余儀なくされました」

 その逆境の中、「これまで準備していた内容をどうするのか?」など、検討を重ね辿り着いたのが、『スーパークローン文化財ってなに?』という原点です。世界の文化財の現状、文化財の保護・継承、そして東京藝術大学の最先端技術をまず知ってもらう展覧会を開催することになったそうです。

「会場では、検温・消毒・換気・適正な入場者数など、新型コロナ感染拡大防止策に努めておりますが、まだまだ会場での鑑賞が心配な方も多くいらっしゃいます。そこで、今回は展覧会公式サイトに、展示作品画像や解説パネルを全てアップし、さらに映像も掲載しています。ご家庭で楽しむこともできますし、来館前の予習にもなり、会場の滞留時間も短縮、鑑賞後にゆっくり復習もできるような取り組みを行いました。急なシフトチェンジでしたが、子どもだけでなく幅広い層からご好評いただいております」
 

▲正面だけでなく裏側も精巧に再現されている法隆寺の釈迦三尊像
 

保存のために公開されない文化財…本当にそれでいいの?

 
 今年は文化財保護法が成立して70周年となります。この法律は1949年1月26日の法隆寺金堂の火災により、今回スーパークローン文化財として展示されている法隆寺金堂壁画が焼損したことが大きなきっかけとなっています。

 他の展示作品も2001年にタリバンに爆破されたバーミヤン石仏の壁画、保存のために一般公開が困難な高句麗江西大墓や敦煌莫高窟、バガン遺跡壁画など、実物は現在見ることができないか、鑑賞が困難な文化財が揃っています。
 

▲バーミヤン東大仏天井 壁画《天翔る太陽神》(部分)[スーパークローン文化財]
 

▲敦煌莫高窟 第57窟 如来坐像 菩薩立像[スーパークローン文化財]
 
「戦争による破壊や略奪、自然災害による損傷、経年劣化などで、見ることができない文化財というのが多く存在しています。また、後世に伝えるという観点から考えると、やはり一番良いのは人の目に触れないで非公開として保管保存しておくということになってしまいます。しかし、一方で『人々が貴重な文化に触れる機会を逃しているのでは?』という考えのもと、開発されたのが、東京藝術大学スーパークローン文化財なのです」

 また、「スーパークローン文化財」は、テロや戦争のない平和な世界を創り出すことへのメッセージも込められています。
 

 
「バーミヤンの石仏など、シルクロードの文化財は人為的な破壊で失われたものが多いのです。2016年のG7伊勢志摩サミットのサイドイベント『テロと文化財-テロリストによる文化財破壊・不正取引へのカウンターメッセージ』にて、スーパークローン文化財が展示されました。世界共有の財産を守り、平和を実現するという強いメッセージがスーパークローン文化財を通して、日本から発信されました」
 

各店が地域の特性を考えてSDGs体験イベントを開催!

 
 実は全国のそごう・西武各店では、夏休みや大型連休などで子どもを対象とした社会貢献やSDGsを体験するイベントを頻繁に開催しています。

 CSR・CSV推進室の薄井徹さんは「大きな流れは1999年に百貨店で初めてISO14001認証取得したときから始まっています。商品を売るだけではなく、イベント、セミナーなどを通じたお客さまとのコミュニケーション強化をすることで地域とともに行う環境・社会貢献活動を考えてきました」と語ります。
 

 
 今年の夏では「SDGsをもっと身近に」をテーマにSDGs体験会を各店で開催。横浜店の「スーパークローン文化財展」以外にも、千葉店の「ミニソーラーメタルカーをつくろう」や「子どもアート講座 ダンボールアートをつくろう」、福井店「豊かな地球をあしたに みんなでしあわせ届け隊」を開催。千葉店の企画はほぼ予約が埋まり、福井店の企画は開始約一カ月で約3,000人の参加と大盛況だという。
 

▲夢中になってミニソーラーメタルカーを作る親子
 

▲ダンボールアートではそれぞれ自由な作品を作り、色使いも個性的
 
 様々なSDGsイベント開催に関しては、各店に裁量権を与えており、それぞれが地域やお客さんの特性に合わせて、企画考案・運営している。毎年店舗ごとに6つほどの企画実施を目標としているそうですが、その中でも千葉店は群を抜いており、毎年30企画以上のワークショップやイベントを開催しています。

「お客様や学校、自治体からご提案いただく企画も多いです。百貨店だけではなく、様々なステークホルダーと協力して企画を実現させています。一度、イベントを協同して開催することで、お互いの信頼関係も高まり、次回以降のイベントも開催しやすくなるなど、大きな相乗効果が生まれています」

 そごう・西武では長年「植樹・育樹」「途上国支援」「盲導犬育成支援」を社会貢献活動の3本柱としていますが、この活動も元々はお客さんの「なにか社会に役立つことをやりたい」という願いで始まったそうです。そして、最近でもお客さんの社会貢献に対する意識の高さを証明したことがありました。
 

 
 それは、7月1日から始まったレジ袋有料化です。

「プラスチック製のレジ袋が有料化になった後、そごう・西武に関しては、レジ袋削減で海を守ると共に、紙袋削減で森も守りますという目的で、あわせて紙袋も有料に変更しました。これまで無料で配布していたので、当然多くのクレームが寄せられるだろうと戦々恐々としていましたが、実際にスタートしてからは、みなさんマイバックを持参して頂いて、特にトラブルもありません。すでにお客様の方が意識やリテラシーが高かったのかもしれませんね」

 SDGsという言葉ができてからは、より社会貢献に関心を持ってくれるお客さんが増えたという同社。今後もSDGsや社会貢献などに絡めたイベントを新型コロナウイルスに注意しながら開催していくそうです!!

「東京藝術大学 スーパークローン 文化財展」公式サイト

https://geidai-clone2020.sogomuseum.jp

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