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ファッション業界の環境問題「安い」「カッコイイ」「可愛い」だけで本当にいいの!? アダストリアが生み出す衣服の再価値化

2021.01.05 (火)

 
 東京都渋谷区に本部を置く、カジュアル衣料品および雑貨を中心としたブランドを展開する株式会社アダストリアは、衣服を作る際の環境的な負荷や衣服ロスに向き合うアップサイクルブランド「FROMSTOCK(フロムストック)」のポップアップストアを11月6日に福岡県博多市にオープンしました。

 アップサイクルブランド創設の狙いや同社が取り組むエコ、SDGsに対する考え方ついて、広報IR室の西山かれんさんと経営企画室の藤本朱美さんに話を聞きました。
 

黒く染めることで本来廃棄されるはずの衣類を再価値化

 
 アパレル業界が関わる環境負荷は、生産地の労働環境、化学肥料の大量使用による土壌の問題、さらにナイロンなど化学繊維の製造で発生するCO2や廃液の問題など多岐にわたります。他にも輸送面や服の製造過程でも様々な環境的側面の問題もあり、海外では既に環境負荷を与えすぎる衣類に関して、不買運動などが起きています。

 そして、企業のみならず、消費者にも関わってくるのが「衣服ロス」の問題です。20世紀後半から市場経済が発展すると同時に、衣類は大切に着続けるものから消費するものに変わりました。流行を追いかけ、新しいスタイルの安価な服を次々と買い換えることは、環境負荷のかかった製品を安易に破棄していることにつながっているのです。そういった衣服の大量消費・大量廃棄への問題提起と、必要とされなくなった衣類を新しい価値に転換するのが、「FROMSTOCK」です。
 

 
「衣類の大量廃棄は無視できない問題になっているということで、100名以上のスタッフを集めた社内勉強会を開きました。そこで案が上がったのが、着られることのない倉庫の衣類を黒で染めることでデザイン的に新たな魅力を創造し、衣類として蘇らそうという発想で出来たのがこのブランドです」(西山さん)
 

▲西山さん(右)、藤本さん(左)
 
 新しいビジネスモデルを構築するために設立された「アダストリア・イノベーションラボ」という部署がブランドを創設したそうです。同部署は、社内外のリソースを組み合わせ、ファッションとテクノロジーを掛け合わせたサービスを開発・展開していくこと目的に2017年に立ち上がりました。元々、同社は服の価値に関しての持続可能性を模索しており、そのひとつの答えが、衣類を染め直すことでの再価値化だったのです。

 博多のショップは、オープンに際して地方紙や現地のテレビ局の取材もあり、反響も大きく、幅広い年齢層のお客さまが訪れました。その中には、同ショップが環境負荷の軽減や、衣類ロスの抑制を目的にしていることを知り、賛同して訪れてくれるお客さまもおり、消費者側の環境問題に対する意識の高さを感じたそうです。
 

 
「ファッションに限らずかもしれませんが、安くていいモノが簡単に手に入れられる世の中で、生産背景や経営方針に賛同した企業の製品をあえて選ぶ方も増えていますし、社会課題への関心も高まっています。もちろん着て『カッコイイ』『カワイイ』などの要素も重要なのですが、そのうえで環境負荷などを考え製造し、社会課題や業界課題の解決に貢献できる企業であることが大事なのではと思っています」(西山さん)
 

原材料の見直しや社員の意識改革も進行中!

 
 アダストリアでは現在衣類ロスの他にも、原材料の見直しにも取り組んでいます。環境への影響を最小限に抑えながら、生産レベルを維持できる方法で栽培されているサスティナブル・コットンの使用がそれで、2025年までに商品に使用する全てのコットンをこうした環境負荷や現地の労働環境に配慮した原材料に変更する予定だそうです。それに加え、ポリスエステルやレーヨンをはじめとする素材においてもサステナブルな原料への切り替えを推進しています。

 また社員に向けては、栃木県の環境NPO団体である「渡良瀬エコビレッジ」に協力してもらい、コットンの原料である綿花がどのようにしてできるのか、有機栽培を通して体験できるプログラムを導入。毎年多くの社員が参加を希望し、環境に対する意識も高まっているそうです。
 

▲「渡良瀬エコビレッジ」にて
 
「こうした改革がスムーズにいくのは従業員の間でSDGsやCSRに関する注目が高くなっていることが影響しています。各地域を管轄している支店が衣料品回収等のイベントを通じて環境に配慮したライフスタイルついてともに考える機会をお客さまに提供することもあり、また事業としてどういったことに取り組むべきか、いち従業員から意見が上がってくることもあります」(藤本さん)

 さらに、同社は衣類ロスや生産過程で発生する廃材、CO2などファッション業界が抱える社会課題を一社だけで解決しようとするのではなく、業界全体で解決方法を考えるため「For Fashion Future」というイベントを昨年に開催しています。

「ファッション業界のこうした課題は、サプライチェーンが長く広範囲に渡るという背景もあり、一社だけでは解決できません。はたから見れば競合同士が協力し合うのは不思議に見えるかもしれませんが、いまこそ業界全体で取り組むべきというのが弊社の考えだからです」(藤本さん)
 

▲「For Fashion Future」の様子
 
 アパレル業界やファッション業界は、比較的に若者と身近な存在です。アパレルやファンションを通じて、若者にどのようなことを期待しているのでしょうか?

「ぜひ一緒に社会を変えていければと思います。SDGsや環境問題などは、若い人の方が関心も高いと思うので、一緒に考えて、積極的に意見を出してくれればと思います。そういった声が数多く上がることで、結果的に消費者の声を企業側も無視できなくなり、ファッション業界は良い方向に変化していくと思います」(藤本さん)

株式会社アダストリア

https://www.adastria.co.jp

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