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下水道パイプから社会課題に挑む東亜グラウト工業 下水から熱エネルギーを回収!

2019.05.23 (木)

 
 お風呂やトイレなど日々の暮らしの中で私たちが汚してしまった水が流れる下水道パイプ。そこから再生可能な熱エネルギーを回収できる技術が、2018年度の「省エネ大賞中小企業庁長官賞」を受賞しました。この技術を開発した東亜グラウト工業株式会社の管路グループ技術開発室室長の田熊章さんに、下水道や熱回収技術、企業理念などについてお話を伺いました。

 まず、下水道とは何かを理解しておきましょう!!

 簡単に言うと、お風呂やトイレで使った後の汚れた水を(汚水)を集めて、きれいに処理してくれているのが「下水道」です。

 汚水を集める下水道パイプと、集めた水を処理する下水処理場などで構成されています。汚水のほか雨水を集める役割もあり、汚水と雨水を合わせて「下水」と呼ばれます。

 2017年度末の時点で、日本の全人口のうち78.8%の人が下水道を利用できるようになりました。都市域を中心に、下水道の整備はかなり進んできています。

 

▲下水道について詳しく知りたい方は東京都下水道局サイト

 

地球12周分の下水道パイプが朽ちていく

 

 東亜グラウト工業が着目されているのは下水道パイプです。しかし、そもそも下水道の整備が進んできたということは、新しく整備する需要は少ないということですから、ビジネスとしての魅力も小さいように思えます。

 なぜ、下水道パイプなのでしょうか。その理由を伺うと、日本が直面する社会課題が見えてきました。

「日本の地下には、約47万km、地球約12周分の下水道パイプが張り巡らされています。高度経済成長期に整備されたコンクリート製のものが多く、20年後には14万km、地球約3.5周分が寿命である『50歳』を迎えます」

 下水には様々な物質が溶け込んでいて、硫化水素という強い酸性のガスも発生します。それら物質にさらされることで、コンクリートは徐々に腐食され、穴が空いたり、パイプの厚みが薄くなったりして強度が低下していきます。

 放っておくと穴から周辺の土砂が入り込んだり、パイプがグシャっと崩壊したりして、道路が陥没することもあるそうです。

「そうなる前に手当てしなければなりません。整備だけではなく、作った物を大切に使い続けられるようにリニューアルしていくことこそ大切なのです。私たちは下水道パイプの老朽化という社会課題の解決に貢献したいと思い、そのリニューアル技術の開発に力を注いできました」

 

▲とある下水道パイプの内面。劣化して表面のコンクリートが溶け、内側の鉄筋が露出しています

 

古いパイプをリニューアルする「光硬化工法」とは

 

 東亜グラウト工業の主力技術は「光硬化工法」です。使用する材料は、耐酸性ガラス繊維に粘りのある不飽和ポリエステル樹脂を浸した(含浸と言います)「ライナー」と呼ばれるフニャフニャのシートです。

 それを折りたたんでマンホールから下水道パイプ内に引き込み、空気圧で筒状に膨らましたところで光を照射します。すると、フニャフニャのライナーが固まり、下水道パイプに変身するのです。

 使っている樹脂は異なりますが、ジェルネイルと同じ原理と言えば、女子には分かりやすいでしょうか。

 古いパイプは埋めたままで構いません。除去するために道路を掘り返す必要はないので、より工事面積が少なく、工事時間は短くてすみます。

 結果として工事渋滞が緩和され、排ガスなどのCO2発生量も抑制できるのです。もとはフニャフニャのライナーだったとはいえ、完成したパイプは新しいパイプ以上の強度を持つそうです。

 

▲古いパイプ(既設管)にライナー(更生材)を引き込む→圧縮空気でライナーを拡張→光でライナーを硬化させる

 

なぜマンホールの上だけ雪が溶けているか分かりますか?

 


 
 下水道パイプのリニューアル技術の開発に従事されてきた田熊さん。ある日、同社の創設者に、こんな問いをかけられたそうです。

「なぜマンホールの上だけ雪が溶けているのか分かるか?」

 皆さんはその理由を答えられますか? 当時の田熊さんは何を聞かれているのかの意味さえ分からず、茫然とされたそうです。そこが、下水から熱を回収するという新技術開発のスタートでした。

「創設者の問いに対する答えは、下水が暖かいから、です。下水は1年を通して水温が15~25度とほぼ一定で、暑い時期は冷たく、寒い時期は暖かく感じます。この温度差から生まれる熱エネルギー『下水熱』を回収する、というのが新しいミッションでした」

 

▲1年間の外気と下水温度の比較。外気に比べ、下水温度は年間を通して安定していることが分かります
 

 熱エネルギーを活用する技術としてはヒートポンプが知られています。給湯にエコキュートを使っている方もいるのではないでしょうか。あれもヒートポンプです。

 循環液を流したチューブを熱源(あるいは冷源)につないで熱を回収(あるいは放出)し、その熱で暖房(あるいは冷房)したり、お湯を作ったりできます。田熊さんは、このヒートポンプに着目しました。ただ、下水道パイプの底にチューブを設置すれば下水熱は回収できるわけですが、それだけでは老朽化という社会課題に向き合ってきた“東亜グラウト工業らしさ”がありません。

 そこで、光硬化工法と合体することを考えました。既存のパイプにチューブを敷いてからライナーを引き込み、光硬化させるのです。こうしてパイプのリニューアルと下水熱の回収を同時に行える「ヒートライナー工法」が誕生しました。

「先ほどお話したように、高度成長期に整備された下水道パイプは、これから50歳の寿命を迎えます。一方、地球温暖化を防止するために、未利用エネルギーの活用はますます重要になります。2つの課題を同時に解決する『ヒートライナー工法』は未来志向の技術だと思っています」
 


▲ヒートライナー工法で下水熱を回収する仕組み
 
 田熊さんの情熱と努力の甲斐あって今ではヒートライナー工法は、幼稚園の床暖房をはじめ、融雪、給湯、空調に全国11現場で活用されています。

「ヒートライナー工法で暖められた部屋で元気に遊ぶ子供たちの笑顔を見ると、こちらも笑顔になります。この工法の開発に携われた幸せを実感する瞬間です」 

 そしてヒートライナー工法は2018年度、「インフラメンテナンス大賞優秀賞(技術開発部門)」「環境省優良賞」「省エネ大賞中小企業庁長官賞」をトリプル受賞。技術が高く評価されたのです。

 

安全な水、クリーンなエネルギー、住み続けられるまちを世界に

 

 ヒートポンプは活用する熱源によって2種類あります。ヒートライナー工法のように「水」を使うものが水熱源式、「空気」を使うものが空気熱源式と呼ばれます。

 いずれも日本ではまだまだ普及が進んでおらず、とりわけ「水」がある場所にしか設置できない水熱源式の普及は難しいそうです。ですが、空気熱源式より効率が良いというメリットがあり、より省エネ、CO2削減の効果が期待できるわけです。

「下水は町のいたるところに存在しますから、水熱源式の普及の足かせだった場所の制約はクリアできます。ヒートライナー工法が水熱源式の普及のきっかけとなり、CO2削減など社会課題の解決に貢献していきたいです」

 東亜グラウト工業の会社理念の1番目と2番目には、こう書かれています。

1、社会資本整備を通じて人命・財産・環境を守り、社会貢献を目指します。
2、技術力を活かし、質の高い製品とサービスを、お客様に提供します。


 同社はこれまでも、東日本大震災や北海道の胆振地震などの災害で下水道パイプが破損した際、会社を上げて復旧工事にあたってこられました。その活動を支えているのが、この2つの理念です。

「水道にはペットボトル水があるように、他のライフラインには代替手段がありますが、下水道、トイレだけは変わりがありません。縁の下の力持ちとして、生活が滞らないように下水道パイプを守っていきたい」

 ヒートライナー工法もまた、まさにこの2つの理念が具現化されたものと言えるでしょう。そして、SDGsのゴール6「安全な水とトイレを世界中に」、ゴール7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」などにもつながっていくことは間違いありません。
 

東亜グラウト工業株式会社

http://www.toa-g.co.jp

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