大学生ネットワーク
成績アップには学習意欲向上がカギ! 教育格差をなくす高精度教育ビッグデータを活用した新しいe-Learning
2021.01.26 (火)
「流し見するだけで学習成績が向上します」
「暗記科目に先生が時間を使う必要はない! その時間を別に活用」
「ビッグデータを活用し学習意欲を向上させることが重要」
「教育格差が生まれるのは経済的問題だけが要因ではない」
このような興味深い発言するのは、岡山大学大学院教育学研究科の寺澤孝文教授だ!!
人間の記憶を研究している寺澤教授は、ビッグデータ解析技術を活用した学習法『マイクロステップ・スタディ』を確立しました。
『マイクロステップ・スタディ』は、スマートフォンやPCなど、いつでもどこでも学習ができるWEBブラウザを利用したe-Learning。従来の「解いて覚えるだけ」というドリル学習とは違い、学習者がどの知識のレベルにあるかを精確に診断・測定することを第一目的としています。
具体的には、学習者に対してアンケート調査のような理解度を尋ねるだけの「見流す学習」を、事前のスケジュールに基づき定期的に長期間行います。そこから得られたビッグデータの解析により、それぞれの学習者ごとに適切な内容とタイミングでフィードバックします。
▲「マイクロステップ・スタディ」公式資料より
本当!? 見流すだけでも十分な学習効果がある!?
そして『マイクロステップ・スタディ』の特徴は、「見流すだけでも長期の視点で見ると十分な学習効果がある」という点で、真面目に取り組んだのに学習効果がなかったという事例は今までないそうです。
つまり、必死に暗記する勉強法ではなく、英単語やスペルやその意味、漢字の読み、四字熟語の意味などを、ある程度の期間流し見し続けることで、成績を上昇させる学習法なのです。
「一夜漬けなどの暗記は、記憶の中では顕在記憶と呼ばれ、日が経てばすぐに忘れてしまいます。『マイクロステップ・スタディ』では、潜在記憶の方を重視しています。それは繰り返し単語などを確認して記憶として定着させるというもので、この方法で覚えた知識は長期間経っても忘れることはありません」
現在、寺澤教授は、長野県の高森町、香川県の善通寺市の小中学校、岡山大学の附属中学校などで基礎学力向上を目的に、教育現場の様々なデータを収集・蓄積し、教育ビッグデータの構築をしています。実際の教育現場では、『マイクロステップ・スタディ』専用にカスタマイズした小型のスマートフォン端末『JetfonP6』を学校に提供。教材の作成は、参考書の出版などを行っている増進堂・受験研究社が手掛けています。
▲『マイクロステップ・スタディ』を使用する小学生。たかもり子育て応援サイトより
▲自宅に持ち帰えられる点が特徴で、通信量も1ヵ月1台95円と経済的!
「教育現場でビッグデータを活用すると、もっと効率的な教育が可能になります。実は単語などの暗記は、先生がいなくてもできる学習なのです。宿題を増やすことで勉強量を増やす方法しかないのが現状ではないでしょうか」
数多くの学生が一律に授業を受ける学校。一度に平均的に学習内容を教えることができますが、一方で授業についてこられない学生や逆に授業内容が物足りないと感じてしまう学生も同じクラスの中に混在しています。先生たちは学習指導要領にのっとり、授業をしなければならないため、特に前者である学力低位層の生徒を全員指導することは非常に困難です。結果的にそのような生徒たちを置いていかなければいけない形になってしまいます。
この課題を解決するためには、生徒たちの学力に応じて対応する必要があります。学力低位層の生徒には「やればできるんだ!」とモチベーションの上がる学習法を、学力上位層の生徒には「もっと学びたい!」と思う学習を提供できれば、生徒たちはより効果的に学ぶことができます。寺澤教授がこれまでの調査で得たデータによると、英単語の暗記など、ひとりで出来る勉強に関しては、教師がテストで尻をたたいて勉強させない方がよいという結果も出ているそうです。
「一律な学校教育は、実は教師も生徒も、お互い貴重な時間を無駄にしているんです。やはり大切なのは、学習意欲です。『子どもたちが自然とやる気になるためには、どうすればよいか』、一昔前までは先生が独自に考えたりしていましたが、今はデータを活用することによって、精確にアプローチすることができます」
教育格差は経済的問題だけが要因ではない
潜在記憶は、一夜漬けなどで身につく顕在記憶とは違い、元々の理解力の高さや年齢による記憶力の違いも関係ないそうです。また、よく親の収入が子どもの学力に影響するという分析結果がありますが、必ずしも教育格差を生む要因が経済的問題ではないことが、寺澤教授の研究でわかるようになりました。
「お金がないと塾に行けないので、学力に差ができてしまうと指摘する人は多いですが、塾に行かないと単純に学習時間が伸びないから、学力が上がらないのです。塾に行かなくても、子どもの学習時間が増えれば良いのです。子どもたちが自主的に自然と勉強をするようにサポートするのが、『マイクロステップ・スタディ』や私の研究だと思います」
現在の小・中・高等学校は、将来的な受験などを念頭に置き、受験勉強のために知識習得がメインとなっています。そのため、短期間に暗記して詰め込む形の教育になっていますが、将来的には『マイクロステップ・スタディ』を使い、暗記型の教育は個々ペースで学習してもらい、創造力や体験、思考力などを身につける教育を重視していくべきだと、寺澤教授は主張します。
『マイクロステップ・スタディ』や教育ビッグデータの活用によって、教育現場は進化を遂げることができるのか!? 教育現場のDX化に目が離せません!!
『マイクロステップ・スタディ』公式サイト
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