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「CSRとは呼ばない!」hhc理念に基づくエーザイが取り組む製薬会社ならではのSDGs!!
法政大学2年生 リン子
2019.03.25 (月)
顧みられない熱帯病「リンパ系フィラリア症」とは…どんな病気?
次に飛弾さんから“顧みられない熱帯病“についてお伺いしました。
顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases)とは、WHO(世界保健機関)が「人類の中で制圧しなければならない熱帯病」と定義している20の疾患のことを指しています。
20の顧みられない熱帯病一覧。聞き馴染みのない病気ばかりですこの顧みられない熱帯病は世界149の国と地域で蔓延し、感染者数は約10億人にもなり、深刻な社会問題となっています。主に貧困国で流行っていることが多いため、薬を無償で提供する必要がありました。しかし、製薬会社にとってはビジネスとして発展しにくいため、研究されることがあまりなく、それゆえに“顧みられない”と呼ばれています。
かつて、感染は世界中に大きく広がっていました。現在でも、清潔さを確保できない飲料水、不十分な上下水道の衛生環境、劣悪な住居環境を有する主に熱帯や亜熱帯地域の貧困層を中心に、感染は続いています。病気がまた労働力や生産性の低下を招き、貧困から脱出できない原因にもなっています。
ここでまず、リンパ系フィラリア症について少し説明していきたいと思います。
リンパ系フィラリア症とはフィラリアという寄生蠕虫(ぜんちゅう)を病原体とし、蚊に媒介され、人に感染する病気です。フィラリアの幼虫を体内に持つ蚊が人を刺すと、蚊の体内の幼虫が人体内に侵入し、人に感染します。そして感染した人を蚊が吸血することで蚊の体内に感染元が取り込まれ、また人を刺し、さらに感染が広がるといったサイクルを生み出しています。感染すると、急性期の症状として発熱がありますが感染初期はあまり症状がないため、多くの人は感染に気付かず、成人してから発症する傾向にあるそうです。感染するとリンパ系に大きなダメージを与え、足が象のように大きく腫れる象皮病などの身体障害を発症することもあります。
エーザイが「リンパ系フィラリア症」制圧に挑んだ理由とは
まずは20もある熱帯病の中から、なぜ、リンパ系フィラリア症の制圧に取り組もうと考えたのか、そのきっかけとなるお話をお伺いいたしました。
「エーザイのCEOである内藤が国際製薬団体連合の会長を務めていた時に、団体のあるジュネーブに頻繁に出張していました。ジュネーブには世界機関も集まっており、WHOの当時のトップであるマーガレット・チャン事務局長に内藤がお会いする機会もあり、2011年に発表された『ロンドン宣言』の下、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、国際機関、政府、製薬企業などがパートナーシップを組んで、2020年までに“顧みられない熱帯病”を制圧しようという連携が始まりました。その枠組みの中で、マーガレット・チャンさんから、“高品質で大量な治療薬が必要であり”、“初めてリンパ系フィラリア症を制圧した日本”の企業であるエーザイに声がかかり、この感染症の制圧に挑むことになりました」
実は日本でも平安時代からリンパ系フィラリア症が存在していたことが確認されています。実はあの西郷隆盛もこの病気を発症し、下半身の異常な腫れで馬に乗れなかったと伝えられています。このリンパ系フィラリア症の薬を製造するうえで、どのような苦悩があったのかお聞きしました。
「当時エーザイは、リンパ系フィラリア症の治療薬であるDEC錠を製造しておらず、ゼロから研究・開発を開始しました。また、2013年に供給する約束に間に合わせる必要がありました。普通、薬を届ける際には各国での承認申請が必要です。しかし今回は、リンパ系フィラリア症の薬を無償提供するため、WHOの承認システムを使いました。DEC錠の無償提供は、弊社にとってこれまでと違うビジネスを意識し、国際保健分野に踏み込むきっかけとなり、多くのことを学んでいます」
<ヤラダ村>現地に行ったからこそ気づいた薬以外の支援や問題点
2013年、エーザイのインド・バイザッグ工場の社員達は工場のそばに位置する“ヤラダ村”というリンパ系フィラリア症が蔓延していた場所でこの病気の制圧活動を行いました。ただ、一筋縄ではなく、一番の問題は、“信頼”や“信用”だったのです。
「突然来た知らない人に薬を飲んでくださいと言われても怖いですよね!? 私たちはまず、村の村長や宗教のリーダーがこの薬は安全だということを示せば、村の人々も飲んでくれるのではないかと思いました。特に、リンパ系フィラリア症が残っている地域では薬を服用するという概念すらないところもあり、まずは人と人との信頼関係を構成し、安心して薬を飲んでもらうことが一番効果的だと考えました。何回も村の人と顔合わせをし、私たちの活動が自分たちのために行っていると理解してもらえるよう取り組みました」
しかし、そのコミュニケーションだけでは、信頼や信用を獲得することができませんでした。いくら口だけで説得しても、人間の心はなかなか動きません。足りないものは何か? その解決策は、リンパ系フィラリア症を制圧する過程にあったのです。
「そもそも何故このような状況に陥ってしまったのかを、エーザイの技術者たちは考えました。そこで調査を進めると、この感染症の根本は、水がうまく流れていないことで、ボウフラ(蚊の幼虫)が湧くことだったんです。これを防げば蚊の数も減り、病気も蔓延しないのではないかという発想から、工場で働く技術者たちが土木作業を行い、水の環境を整備しました。薬を服用する支援とともに病気の教育やその他の対策をすることで、リンパ系フィラリア症に新たに感染している人がいないことが確認できたのです」
まずは自分たちが行動したことで、地元の人たちの信頼を獲得。その後、地元の人たちも土木作業を手伝い、さらに協力しながら村の環境を整えていったそうです。また、ヤラダ村では台風が来て学校が壊れてしまったときにエーザイの社員がその学校へ行き、学校を修理する手伝いや必要な物の提供をしていたそうです。関係性の強まりから、IT部門の方がヤラダ村の生徒へITの授業を行い、子供たちも勉強に興味を持ち始め、テストを行うと97%が合格したそう。このように、その村の病気を治すだけでなく、生活環境が改善されたことで、教育の質も向上。見事、負のスパイラルから正のスパイラルへと変化させることができました。
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