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安全・安心な観光地の作り方とは? 「コロナ禍」跡見学園女子大学の篠原靖准教授が解説する観光業界の未来!

2020.08.18 (火)

 
 2020年8月現在、国内外は依然として新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、厳しい状態が続いています。特に人の移動が感染リスクとされる以上、観光業界は打撃が大きく、これらの観光産業全体に携わる人々の死活問題となっています。この苦境をどうの乗り越えていくべきなのでしょうか?

 跡見学園女子大学観光コミュニティ学部の准教授で内閣府の「地域活性化伝道師」なども務めている篠原靖さんにコロナ禍における観光の現状と未来を解説してもらいました。
 

コロナウイルスの影響は長ければ3年!? 地域協力がないと乗り越えられない!!

 
 2020年3月以降、観光業は大きな打撃を受けています。東京五輪を想定して期待していたインバウンドはほぼゼロになり、国内旅行も自粛の影響を受け、観光需要は過去最大の減少幅となっています。

「観光業の収入は3月以降、ほぼゼロに近い状態です。感染拡大を防止するという観点から見れば、地域をまたぎ人が移動する観光や旅行は感染を全国に広げる可能性があるため、自粛すべきという考えもあるかと思います。しかし、新型コロナウイルスの影響は3年以上続くという専門家の予想もあります」

 篠原准教授は観光業界の状況説明だけでなく、さらに今後の懸念点も指摘します。
 
「観光産業は『すそ野産業』と言われているように、この効果は観光産業だけに留まる物では無く、人々が観光で地域を訪問する事による経済効果は第一次産業にまでおよび莫大なものがあります。特に地方では深刻な高齢化や人口減少の中で観光による経済が止まってしまうと地域の経済全体が破綻する事にもなりかねません。観光地の受入体制は一度崩壊してしまうと復活させることは困難になるでしょう」

 実際に規模はどの程度減少しているのでしょうか。国土交通省観光庁のホームページで公開されている統計を確認すると、大きな苦境に陥っていることがわかります!

 国内及び海外旅行を扱う旅行業者の取り扱い額は大幅減少。そして、宿泊者数に関しては、令和2年5月の延べ宿泊者数(全体)は779万人泊で、前年同月比-84.9%。日本人延べ宿泊者数(5月)は766万人泊で、前年同月比-81.6%。外国人延べ宿泊者数(5月)は、13万人泊で前年同月比-98.7%だった。都道府県別の延べ宿泊者数を確認しても、大幅に減少しており、特に沖縄県、長野県、京都府、奈良県、石川県などの観光地の減少比率が目立っています。
 

▲国土交通省観光庁:主要旅行業者の旅行取扱状況速報(令和2年5月分)より
 


▲国土交通省観光庁 :宿泊旅行統計調査(令和2年5月・第2次速報、令和2年6月・第1次速報)
 
 観光というのは、提供するものが製品や建物ではないため特に復活が難しい産業だという。そこで、篠原准教授が提案するのが、日本版DMO(Destination Management Organization)の実現です。DMOとは、観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人のことで、欧米では、特に大きな観光地という訳ではなくても、こうした法人を設置し、街中、地域で利益を生み出そうという仕組みです。
 

 
「現在行われている3密を避けるなど、個人個人にゆだねた感染防止対策では当然限界があります」

 現状では感染予防対策は国の呼びかけで、一般国民や各事業者にゆだねている状況ですが、これからは感染防止策を、地域全体で構築し、実施する必要があります。現状では、ある旅館でコロナ感染者が出た場合、感染者やお店側が強く非難されることがあります。そうならないために何をすべきなのでしょうか?

 観光庁では数年前から上図の様に「日本版観光DMO」と言う観光地の受入体制整備を進める組織整備を行い、現在では160以上の地区が観光庁の認定を受けています。世界中がコロナ禍の中で苦しんでいる現状の中では当面はインバウンド(国際観光)観光客の受け入れは望めない訳ですが、いつの日か国際線の運行が可能になり、渡航制限が解除されれば、世界の人々が海外旅行先を選ぶ際の第一の基準は、「感染の心配が少ないない国」を旅先に選ぶ事になります。

 この様な観点から、今後の日本の観光の促進は世界に誇る安全・安心な受入体制の確立を目指し、日本オリジナルの観光地づくりを早急に推進しつつ、その安全性を世界に発信していく必要があります。また、地域の医療機関や感染防止の専門家が観光地を抱える町全体の感染防止策を指導し、安全で安心な観光地を形成すること、旅人が安心して訪問していただける「観光先進国日本」が世界に示す「地域一体で感染防止を徹底した観光地域づくり」など、篠原准教授はこのような新たな重いテーマを研究分野に加え、日本の観光の未来を構想しています。
 

観光の資源を自ら生み出す! 需要を待つビジネスから創造するビジネスへ

 
 元来、観光業界は災害や伝染病に弱いといわれています。それは観光が戦争や災害がない場所でしか成立しない「平和産業」だからです。

 まず、その篠原准教授は「今はなにが起きてもおかしくない時代です。毎年異常気象ともいえる未曾有の豪雨や頻発する地震への恐怖、さらには国際間の政治問題が起こるたびに観光による交流人口は減少してしまいます」と明かした上で、「この様な観光の特性を改めて理解し、インバウンド観光のみに頼らない、現代の日本人が旅に出たいと感じる新たな旅の魅力を創造して行くべきでしょう。すなわち地域に眠る隠れた宝を見つけ出し、磨き上げる事です。環境の変化に弱い観光産業はこのままでは、存在自体が難しくなっています。例えば社会インフラ(ダム・道路・橋など)をそのまま観光として利用したインフラツーリズムなども注目されていますが、これからは集客をすると言う概念から新たな観光需給を創造する理論に変わるべきと考えています」と力強く語ります。

 新たな需要創造という観点において、篠原准教授が提唱している観光産業が「『集客理論』から『需要創造理論』へ」という考えです。観光資源がある場所に人を呼び込むのではなく、新しく観光需要を作るという考えです。

 例えば、現在はコロナの影響が続いていますが、少人数で密にならなければ感染リスクは低いといわれています。そのことを利用し、休暇と仕事を兼ねた「ワーケーション」や「リゾートテレワーク」を提案すれば、これまでそれほど観光地として魅力のなかった地域でも建物や環境の良さで需要を見込める可能性があるのです。

「観光はこれまで、観光資源のある場所に、いかに集客するかということを重視してきました。しかし、これからは、新しい需要を作る必要性が求められています。地域の魅力をどう顧客価値に変えるか、それには観光業界だけではなく、地元の人の協力も不可欠です。これには若い人の協力も必要かもしれません」
 

怪我の功名か!? コロナ禍は「オーバーツーリズム」を見直す機会にも

 
 今回のコロナの影響は災厄でしかありませんが、それ以前に日本は、増えすぎた外国人旅行客により、地元住民の生活が支障をきたす「オーバーツーリズム」が問題視されていました。

「観光を改めて見直すいい機会なのかもしません。オーバーツーリズムはいまとなれば懐かしい話ですが、我々は反省しなければいけない。例えば、京都の嵐山で高級な食器を作っていた工房が、外国人向けの安価なモノをつくるようになり、それが今軒並み潰れています。間違っていたものはこのコロナで見直し、ちゃんとした観光地というものをもう一度作らねばなりません」
 

▲京都の観光地・二寧坂の人混み
 
 3月以降、観光業界は殆どの会社が新規採用を断念しています。篠原准教授のゼミ生も、泣く泣く観光業界以外に就職していく生徒が殆どだと言います。しかし、それでも希望は捨てないで欲しいと篠原准教授は訴えます。

「学生たちは希望していた観光関連企業への就職を諦め、不動産企業や保険企業などに向けて就職活動をしています。観光関連企業への就職は困難になってしまいましたが、内定をいただいた別業種の企業さんを大事にしてほしいと考えています。そこで一生懸命仕事をして、経験を積むこと。今後、観光産業が形を変えて復活した際に、その経験がかならず役に立つと思います。そして、自分の好きなものは忘れずにいてください」
 

▲跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部 篠原靖准教授

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