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世界で22億人が水を確保することが困難に!? 信州大学「アクア・イノベーション拠点」水を安定供給する試み

2021.01.21 (木)

 21世紀は『水の世紀』とも言われ、地球レベルで水資源の枯渇が問題となる可能性が指摘されています。そういった世界共通の課題になりつつある水の問題に挑んでいるのが、信州大学と日立・東レなどの企業、そして国の産学官が一体となって取り組むセンター・オブ・イノベーションプログラムのひとつ「信州大学アクア・イノベーション拠点」です。

 そこで「豪田ヨシオ部」は、プロジェクト採択および開始時のプロジェクトリーダーで元・日立製作所 産業・水業務統括本部 技術最高顧問を務めた同大学の上田新次郎特任教授に詳細を聞きしました!!
 

飲料水の確保だけではなく食糧問題解決に!

 
 地球上にある水のうち、約97.5%は海水で、人間が飲み水や生活用水として活用できる淡水は残りの2.5%しかありません。しかも淡水の内で南極などの氷河・氷山に固定されているものがおよそ70%。残りの30%も、ほとんどが地下深くの帯水層にあるということで、人間が飲料水や農業用水として使用している淡水は全体のわずか0.01%しかありません。
 

 
 ユニセフの調べによると、現在、世界では約22憶人が安全な飲料水にアクセスできないと言われています。そして、約8憶人の人々が農業用の水が不足した地域に住んでおり、食糧不足にさらされています。

 アクア・イノベーション拠点は2013年に設立され、水問題の是正のため、海水淡水化を中心に、安全な水を安定供給できる方法を研究しており、信州大学の他に、日立、東レ、昭和電工などの企業が参加しています。炭素系素材のカーボンナノチューブを使った膜で、塩分や不純物などをろ過し、日常的に使用可能な飲料水など淡水を作り出すことを目指しています。
 

▲信州大学国際科学イノベーションセンター(AICS)
 
「海水を飲料水化する技術というのは、これまでもありましたが、現在使われている高分子膜は海水に高圧をかけて、真水を作り出している関係上、表面に不純物がたまって目詰まりを起こしやすい構造です。定期的に膜を薬剤で洗う必要があるうえに、時間が経てば交換しなければならず、かなりコストのかかるものです」

 カーボンナノチューブを複合させた高分子膜は表面に不純物が付着しにくいという特性があり、目詰まりしにくく、薬剤にも強い材質とのこと。現在、福岡県北九州市で実証実験をしており、実用化すれば、現在の淡水化装置と比べ、大幅なコスト削減が期待できるそうです。新しいカーボンナノチューブ複合膜は、海水淡水化だけでなく汚染された水を浄化したり水道水をさらに美味しくしたりすることにも活用できます。
 

▲大学施設内でのカーボンナノチューブを使用した膜の製造の様子
 

▲北九州市の海水淡水化実証試験設備
 
 また、海水淡水化だけでなく、汚染された水を浄化し使える水にするプロジェクトも進行しています。信州大学の強みである材料技術を駆使し、アフリカ地域で深刻化する地下水のフッ素汚染問題を解決すべく、無機結晶材料によるフッ素除去材や綿を素材にした高感度フッ素センサが一体となり、現地に即したフッ素除去法を開発。“安全・安価・入手可能”な飲用水の供給に貢献しています。

 信州大学がこれほど水に大きな関心を持つのは、飲料水としてだけではく、食糧問題の解決にも直結しているからです。アクア・イノベーション拠点の最終的な目的は、世界の水窮乏地域に将来的には飲料水や生活用水だけではなく農業用水を安定供給することです。

「水が身近にある日本では気づかないことも多いですが、農業をするためには安価な水が手に入るということが重要です。現在は飲み水のみですが、今後、世界人口が増加することも考慮し、食糧の増産のために、排水なども再利用する形で、乾燥地域での農業用水の確保というのも考えなければいけません」
 

世界中の人材育成が重要! 新たな技術開発に期待

 
 飲料用・農業用の淡水確保と同じく、現地での技術者育成も重要な課題です。なぜならば、現地で、日本人など先進国のスタッフが常時サポートすることは難しいからです。

「研究者や技術者の育成は、信州大学の重要なミッションのひとつで、様々な地域から留学生を呼んで、現地の井戸や浄水施設のメンテナンスなどを学んでもらっています。浄水施設や現在研究中の淡水化施設は、スイッチを押すだけで終わりではありません。技術的なことを理解して、しっかりと運転管理できる人が現地にいないと機能しません」
 

▲タンザニアでの手押し井戸の水質調査
 
 また、上田さんは水問題だけでなく、日本の環境に関わる現状や情勢なども語ってくれました。というのも、日本では去年の10月26日に開会した臨時国会の所信表明演説で、菅義偉首相は、国内の温暖化ガスの排出を2050年までに実質ゼロとする方針を表明しました。

「淡水を作る設備以外にも、再生可能エネルギー施設やEV車技術など、環境に関わる全てのことが今後は重要になってきます。脱炭素化に関して日本は欧州にだいぶ遅れをとってきました。アメリカもバイデン新政権では脱炭素化に向けたパリ協定に復帰するようです。温暖化ガス排出の実質ゼロを目指す脱炭素化に対して、今回の政府の方針表明により日本もようやく世界の潮流に追いつこうとしています。これからは環境が最も重要なキーワードでありフロンテイアです。人材育成によって成長した若い世代の人たちが、人のために役に立つ技術を開発したいという熱意を持って、新たな技術を開発してもらいたいですね」

 同プロジェクトは2022年3月31日に終了する予定で、仕上げの段階に入っています。あと約1年、上田さんは「最後までやり抜きます」と力強く語った。

信州大学「アクア・イノベーション拠点」

https://www.shinshu-u.ac.jp/coi/

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