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私たちがどんな世界を創りたいか!?【コロナ時代の新たな観光】 跡見学園女子大学とジャルパックのオンライン講義
2020.07.15 (水)
跡見学園女子大学とJALグループの旅行会社である株式会社ジャルパックは、「コロナ時代の新たな観光 産学連携による新発想の観光教育」と題し、6月18、25日、7月2、9日の計4回に渡り、「with コロナ」時代を生き残るための新たな観光教育をオンライン上で実施。豪田ヨシオ部は、最終日に当たる7月9日の特別オンライン講義を取材した!
最終日は、ジャルパック海外拠点からのライブ中継と同社の代表取締役社長・江利川宗光氏も参加するということで、総勢250名以上の大学生や関係者が集まった。2020 年度「旅行産業論」受講者約80名や就職部キャリアデザインセミナー聴講生20名、そして同授業に関心のある他学部の学生などが参加し、注目度の高い講義となった。
まず、観光庁の観光人材政策担当参事官 兼 観光人材育成室長の小熊弘明氏が、新型コロナウイルス感染症による観光産業関連への影響について、2020年1〜5月の訪日外国人旅行者数は、394.4万人の71.3%減(前年同月比)に落ち込み、宿泊予約について4月以降は8割以上の施設が70%減少していると説明した。
実際に海外はどのような現状なのだろうか!?
講義の第一部では、ハワイ、香港、ドイツに在住する同社スタッフが、コロナ禍にある現地の様子をレポートした。
ハワイからはワイキキカラカウア通りを紹介し、人も車の数もかなり少なく、いつもにぎやかな通りに活気が少ないと説明。香港ではナイトマーケットの「男人街(ナンヤムガイ)」を歩きながら、閉店してしまった飲食店などを紹介。香港では、マスク着用率はほぼ100%なようだが、現在再び感染者増加の傾向が現れ始めているため、現地では「第3の波」が懸念されているという。
▲左がハワイ、右が香港
最後にドイツでは、フランクフルトの街並みからレポート。ドイツ人は旅好きの国民性とのことで、フランクフルトの人々は、出入国が緩和され次第、各地に旅行する計画を立てている人が多いとの情報もあり、潜在的な旅行熱は強いようだ。
そして第二部では、江利川社長による講義を中継。社長自身が日本航空(JAL)在籍時に体験した会社更生法適用の出来事を例に出し、同社再生のために挑んだ経験が、きっと「Withコロナ時代」の観光業界の新しいあり方を模索するのに役立つと力強く語り、学生たちにも希望を持って欲しいと呼びかけた。
しかし、旅行業界を希望する学生たちは依然として厳しい状況が続く。
先日、ANAグループは2021年度採用の中止を決定。グループ全体で約3200名を採用する予定だったが、「新型コロナの影響の長期化懸念」などを理由に採用中止を発表した。
ジャルパックでも、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、現時点で今後の事業環境を見通すことが困難な状況であるため、2021年度入社新卒採用活動の中断を決定している。
江利川社長は、同社の採用や今後の方針について、「新型コロナウイルスの感染拡大は当社の経営に甚大なる影響を及ぼしておりますが、先ずは事業継続と社員の雇用や生活の安定を第一に、この難局を乗り越えて行きたいと考えています。今回中断させていただいた新卒採用については、事業計画を策定後、慎重に検討し、再開の可否を判断する予定です」と説明した。
実際に、跡見学園学生代表観光コミュニティ学部4年の室町美咲さんは、今回のコロナの影響で観光業界への就職を断念したひとり。他にも観光業界を諦める学生も多いはずだ。
ジャルパックとしては、将来的に中途採用の救済支援策などを実施する可能性はあるのだろうか。
江利川社長は、「コロナの影響による事業環境の見通しが立っていないため、先の中途採用についても現時点では不透明な状況ですが、採用再開が可能となった折にはいろいろな可能性について改めて検討したいと思います」と見解を示した。
一方の室町さんは、観光業界への就職は断念したものの、「今回の海外中継で、まだまだ旅行のニーズというのが潜在的にあるんだなと知りました」と語り、別の業界に就職したとしても、旅行業界のことに関わることはできるかもしれない、とポジティブに考えているという。
その他の特別授業を終えた学生たちは、どのような部分に感想を持ち、「気づき」や「発見」を得たのだろうか。
「観光地から観光客がいなくなるということは経済面でとても苦しくはなりますが、地元住民の方々ののんびりと過ごせる時間が確保できたり、海などの環境が改善されることなど良い面もあるということが分かりました」(旅行産業論正規受講生・4年生)
「どれだけ大変なことが起こっても、どれだけ年を重ねても、『旅』は人々に癒しや感動を与えてくれる存在であるということは変わらない。『旅は世界の潤滑油』という言葉を耳にしたことがあり意味も分かっているつもりでいたが、今回の講義を通し改めて、『旅』が世界共通の無くてはならない存在であることを心から感じることができた」(旅行産業論正規受講生・4年生)
「『どんな世界になるか』ではなく『私たちがどんな世界を創りたいかである』という江利川さんの考え方が素敵だと思い、感銘しました。世界中が混乱し閉鎖している中で日本がまず『第四の開国』という形で動きだす必要があるということに『歴史』から学ぶのだと思いました」(旅行産業論正規受講生・3年生)
「人は一人では生きていけないと思います。私たちは支え合って生きていると思います。それは国同士になっても同じであると思います。世界問題を解決するためには国際連携が必要だという江利川さんの考えに共感しました。それをする上で大切なことは『強い意志を持つこと』『世界の人々と交流できる共感力を身につけること』『AIやデジタルが普及する中で人間らしさを失わないこと』であると学びました」(旅行産業論正規受講生・3年生)
今回の特別講義で、違った角度から「観光」「旅」を学習し、「気づき」や「発見」を得ることができた学生たち。コロナ禍で苦しい状況であることは変わりないが、新たな対策や仕組みを構築し、イノベーションを生み出すことができれば、“また違った観光・旅”が世界のスタンダードになるかもしれない。それを実現できるのは、現在観光関連業に携わっている方々だけでなく、今回講義を聞いた大学生たちなのかもしれない。業界全体でこれからさらなる挑戦が続いていく。
跡見学園女子大学
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