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2017.10.25 (水)
自然葬の一種である「散骨」は、大まかに「森林散骨」と「海洋散骨」の二種類に分かれる。「散骨」は、火葬後の遺骨を粉末化した遺灰を撒いて供養する葬儀法で、森林に撒くならば「森林散骨」、海に撒くならば「海洋散骨」と位置づけられている。
まず、「森林散骨」で問題になるのは「土地」の存在である。1948年に「墓地、埋葬等に関する法律」(略:墓埋法)が制定され、第4条には「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない」(原文ママ)と決められている。
村田氏は「要するに遺骨は墓地と決められたところに埋葬しなければならず、墓地以外の場所に埋葬してはいけないことになっていますが、ただ“遺骨を撒く”という行為をやっている人もいる。その人たちの主張としては、“埋めてはいないから墓埋法には触れていない”と主張している。かなりグレーゾーンになっており、住民トラブルに発展し、禁止条例を制定している市区町村もあります」と説明。
遺骨を撒かれたことで土地の転売ができなくなるケース、近隣住民で反対運動が起こる場合もあるようで、静岡県熱海市の山林では、付近に散骨場施設が計画され、住民らが反対運動を展開。散骨の規制を可能とする条例が可決された。他にも、北海道長沼町、長野県諏訪市、埼玉県秩父市、静岡県御殿場市などで散骨に関する条例や規制が制定されている。
一方、「海の所有権」について、1986年に最高裁で「海は土地ではなく、所有権の対象にはならない」と判示されている。そのため、「海洋散骨」においては、民事的なトラブルが起きづらい特性を背景に、「墓石を買う必要がない」「墓石清掃の手間が省ける」などの物理的なメリットと、「お墓参り習慣の希薄化」「お墓の継承者減少」などのライフスタイルの変化もあり、その手軽さから主に大都市在住者を中心に「海洋散骨」を望む人が多くなっている。
「海洋散骨」の需要が増える中、一つの懸念として浮上しているのが、環境への影響だ。

村田氏は「火葬した際に人体から六価クロムが検出される場合がある。また、火葬する際にステンレス台にご遺体を乗せるので、その際に燃焼してご遺体に付着してしまうケースもある」と説明。
六価クロムは環境有害物質に指定されており、発がん性物質として国際がん研究機関及び米国環境保護庁にリストアップされている。
六価クロムの汚染問題が国内の社会問題として大きく取り沙汰されたのは、1975年頃。ある化学メーカーが大量の六価クロム鉱さい(溶かした金属から出る残りカス)を、江東区の広範囲に投棄していたことが発覚。周辺地域には草も生えず、虫も生息しない状況に陥ってしまったという。さらに、当時の一部従業員は鼻中隔穿孔(鼻の左右を隔てる鼻中隔に穴が空く症状)や肺がんを発症するケースも確認された。周辺住民、元従業員は化学メーカーを提訴。最終的には和解が成立している。
日本海洋散骨協会はホームページで以下のように記載。
遺灰を海に還すための環境対策人が臨終を迎え、火葬された後に残る遺灰の主成分は「リン酸カルシウム」ですが、火葬の過程で、自然界ではほとんど存在しない「有害物質、六価クロム」が環境基準値を超えて生成されることが確認されております。
「六価クロム」は非常に強い酸化作用があり、環境破壊・皮膚や粘膜に付着すると皮膚炎や腫瘍、ガンの原因になる物質といわれています。環境基本法に基づく、水質汚濁に係る環境基準では、「六価クロム」は1リットル当たり0.05mg以下に維持することが望ましいとされています。
村田氏は「現在、膨大な量の遺灰を撒いているワケではないので、実際の影響としてはほぼないと思います。ただ、将来的な環境汚染への可能性は0%ではないため、弊社及び当団体加盟企業では、散骨する前に遺骨に中和剤で六価クロムを徹底的に処理するようにしています」と強調した。
各企業が環境に配慮した処理をしていれば問題がないように思われるが…そこには一つの超えなければならない壁が存在している。
海洋環境を守るために法的規制が必要

▲一般社団法人「日本海洋散骨協会」より
村田氏によると現在、「海洋散骨」サービスを提供している企業は、大小関係かかわらず合わせると全国で100社ほど。日本海洋散骨協会に加盟している事業者であれば、六価クロムを中和剤で処理しているが、協会に加盟していない企業では、そのまま散骨してしまうケースもあり、また個人的に散骨してしまう場合もあるという。現状では海洋散骨による環境汚染が顕著になっているワケではないが、今後参入企業が増え、闇雲に散骨する個人も増加すれば、当然、重大な環境問題としてクローズアップされていく。
では、どのようにすれば良いのか? 現状の問題点はどこにあるのだろうか。
村田氏は「現状では、海洋散骨に関して法的な規制がないことが最大の問題。つまり、罰することもできない。今後、海と共存共栄するために法的拘束力が必要です」とコメント。協会としては法整備を進めるべく、独自のガイドラインを作成。実際に行政にも掛け合ったという。
「3年ほど前に行政と意見交換会を行ったのですが、『それを誰が取り締まるのか』というのが、一番の障壁となっています。海洋散骨の難しい点は、管轄が複雑なんですよね。海は海上保安庁、墓地関係だと建設局。さらに環境省や厚生労働省も絡んでくるので、管轄を明確化しづらい。縦割り行政なので、なかなか法整備が進まないんですよね」
大きな社会問題に発展してからでは遅い。持続可能な社会を目指すためには、小さな問題のうちに、しっかりと規制を作る必要があるようだ。海は「地球の源」。我々が海と共存共栄するために、人間の英知でもある「法」をもって、海を守っていかなければならないだろう。
最後に村田氏は「海洋散骨を真剣に考えることは将来、海を守ることにもつながる。また、若い人にとっては親や自分自身の、最期を考えるきっかけにもなると思っています。若い人にとっては、まだ“死”について深く考える人はほとんどいないでしょうけど、死について考えることは、生きることを考えることにつながる。“終活”っていうのは高齢者のためのものではなくて、大学生から考えるのも全然早くはないし、“終活”は“就活”に役立つんですよ」と若者に訴えた。
一般社団法人「日本海洋散骨協会」
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