豪田部とは

大学生へ

SDGsフォーカス

地球温暖化とプラスチック問題はイコール! 日本列島と接している海に海洋プラスチックが最も多い!?

2020.09.11 (金)

 
 2020年7月から日本でもプラスチック製のレジ袋有料化がスタート。この有料化の狙いの背景には海洋ごみ問題や地球温暖化の問題などがありますが、世界的に見るとかなり遅れた対応といえます。今、世界では海洋に投棄されるプラスチックごみがかなり深刻な問題になっています。

 その問題に国内でいち早く注目し、警鐘を鳴らすべく、著書『脱プラスチックへの挑戦 持続可能な地球と世界ビジネスの潮流』(山と渓谷社)を出版したNHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサーの堅達京子(げんだつきょうこ)さんに、海洋プラスチックに関する世界の情勢や今後日本が取り組むべき課題などを聞きました。
 

マイクロプラスチックは水生生物への影響に留まらない

 
『脱プラスチックへの挑戦 持続可能な地球と世界ビジネスの潮流』は、NHK BS1で放送された「BS1スペシャル 『“脱プラスチック”への挑戦~持続可能な地球をめざして~』」の放送で紹介しきれなかった部分をクローズアップした内容となっています。

 海洋プラスチックの問題というと、ビニール袋などを誤飲してしまったクジラの胃袋の写真やストローが刺さったウミガメなど、水生生物への悪影響がクローズアップされがちですが、堅達さんの著書はそのことに触れつつも、もっと大きな問題に注目しています。

 それは、マイクロプラスチックの問題です。

「紫外線や波に砕かれたプラスチックというのは、細かくて回収が不能になってしまいます。これを止めていかないと、海の汚染に留まらず、大変なことになります。魚などが運び屋となり人に返ってくるからです。食物連鎖を通してやがて人に返ってきます。あまり知られていませんが、日本近海もプラスチックごみが溜まるスポットのひとつといわれています」
 

 

今が瀬戸際!!  「太平洋ごみベルト」に約8万トンのプラスチック

 
 そして、マイクロプラスチック以上に大きな問題と位置づけられているのが、海洋投棄されるプラスチックと温室効果ガスの因果関係です。長年地球温暖化の問題を、番組制作を通して扱ってきた堅達さんにとって、海洋プラスチックの削減と温室効果ガスの抑制はイコールになっています。

「取材をしていく中で、生態系に関する問題の他に、これらのプラごみが、海水や太陽光で劣化する過程で温室効果ガスが放出されているという新しい研究結果が出てきました。しかし、これらのごみがどれほど大きな影響を及ぼしているのか、正確な資料はありません。まだ人類の知らない場所で温暖化の原因があることはかなり深刻だなと思い、それを伝えるために、本を書きました」

 こういった海洋プラスチックは地球上の海を漂っていますが、最も多いと言われているのが、「太平洋ごみベルト」と呼ばれる約8万トンものプラスチックが集まっているエリアです。
 

 
 日本列島と接している海に最も海洋プラスチックが多く、日本という国単位でみると、海洋プラスチックごみの排出がトップクラスに多いにも関わらず、堅達さんを中心としたBS1スペシャルの取材班が取り上げるまで、日本ではそれほど大きくクローズアップされることはありませんでした。

「この本では『プラスチックごみと温暖化のふたつが繋がっている』ということを伝えたかったんです。欧州では、2025年をターゲットイヤーとしてプラスチックの削減に取り組んでいますが、それは気候危機を解決するには、今が瀬戸際、ギリギリであるという認識からなのです」
 

世界各地を襲う異常気象! 地球温暖化問題への意識が高い欧州

 
 そして、地球温暖化と海洋プラスチックの因果関係に強い関心を寄せているのが欧州各国です。EU諸国では、日本に先んじてプラスチック製品の抑制などを始めています。2019年5月には使い捨てプラスチック削減への指令を採択し、2021年までに代替製品が手頃な値段で容易に手に入る使い捨てプラスチック製品の販売を禁止しようと動いており、大企業なども協力しています。欧州、特にEU諸国が、環境問題に関して敏感なのは、とある災害が大きく影響しているそう。

「大きなきっかけは2003年にヨーロッパを襲った熱波でした。この熱波の犠牲者はヨーロッパ全体で3万5000人とも5万人とも言われています。旅行した人はご存じかと思いますが、ヨーロッパはこれまで夏それほど暑くならず、クーラーのない建物や家も多かったのです。この時期から異常気象と地球温暖化の因果関係などが盛んに報道されるようになりました。そのためかなりの人々が、温暖化への関心が高く、情報収集に積極的です」
 

 
 アメリカに関しては、強固に温暖化を否定する勢力もありますが、2005年のハリケーン・カトリーナや2012年のハリケーン・サンディなど実害も起きていることやアル・ゴアさんの地球温暖化問題についての啓蒙活動などにより、かなり賛同する人々も増えているそうです。日本でももっと温暖化や海洋プラスチックの問題を周知していくには、こうした関連情報を繰り返し報道することが大事です。

「海外では、もはやCO2の排出抑制だけでは不十分という論調になっています。プラスチックや他の廃棄物の抑制も含めた、『サーキュラーエコノミー(循環型経済)』を目指さなければならないという動きが起きています。そして今回のコロナ禍をきっかけに、社会や経済を、脱炭素、循環型経済など持続可能な方法で復興しようとする『グリーンリカバリー』という運動も大企業などを巻き込み開始されています」
 

ボイヤンさんやグレタさんなど若者が環境問題の中心になれる理由とは?

 
 環境保護に関する行動を起こす際、欧州では若い人の訴えというのもかなり重要なものになっています。去年、地球温暖化によってもたらされるリスクを訴え、世界各国のメディアで取り上げられた、スウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんは記憶に新しいですが、堅達さんの本の中にも、18歳で海洋プラスチックの実態を訴え、NPO「オーシャンクリーンアップ」を立ち上げたオランダ人の若者、ボイヤン・スラットさんの活動内容が書かれています。

 日本でも、若者が温暖化や脱プラスチックに関する行動を起こすことはありますが、それほど大きなムーブメントには発展していません。これは、教育制度の違いからきているそうです。
 
「多様性を受け入れるという教育体制が、若い子が声をあげるという行為を当たり前のこととしています。もちろん、否定的な人もいますが、多くの人は『積極性があっていいね』という考えです。学生が中心となって数万人規模のデモ活動ができるのは、こういうことを前向きにとらえている証明でもあります。彼ら彼女らにとっては非常事態だから動いているのです。学校に行っている間に、地球の気候変動が大変なことになっているという危機感。学校側も『今日はデモに行っても問題ないです』と許容しているケースもあります」

 また、デモに関しては、選挙権のない若者にとっての選挙活動に代わるものという考え方が欧州では広く浸透しており、大人たちもしっかり若者の主張を聞き入れる傾向が強いそうです。そして、注目すべき活動には、それを主張する人がたとえ子どもであっても、大企業や資産家は出資を惜しみません。こういう土壌はどういった環境で育まれるのでしょうか。
 

 
「ボイヤンの場合、『太平洋ごみベルト』と呼ばれる、世界最大のプラスチック集積地からプラスチックを回収するための、クラウドファンディングを立ち上げたところ巨額の投資をしてくれる大人が次々と現れました。もちろんボイヤンのプレゼンがよかったということもありますが、税制の関係で寄付文化が欧米では強いのです。出資者は、社会貢献のPRにも、税金対策にもなります。日本はそのシステムがそこまで整っていません。モラルだけで動かない人も巻き込むためには、まだまだと言えます」
 

日本企業はもっとアジアの国と協力すべき!!

 
 海洋プラスチックやプラスチック消費そのものの抑制は、世界全体で取り組まなければいけない問題です。それには、これから消費が増えていくであろう発展途上国での資金面での援助も含まれます。

 前記したボイヤンさんは現在、太平洋ごみベルトでのごみ回収の他に、マレーシアなどで、川から流れてくるごみを収集するシステムを稼働させています。現地の人々は川や海がキレイになるならと喜んで協力しているそうですが、こういったことは本来、遠い欧州の人が実施する前に日本が積極的に関わるべき問題だと堅達さんは考えます。
 

 
「アジアの国なのだからもっと早く手を差し伸べられなかったのかなとは思います。海洋ごみを減らすアプローチは、先進国の企業が共同してやっていかなければいけない問題です。アジア各国に日本企業はどんどん進出しているので縁がないわけではない、やろうと思えばできます。日本で大規模な工場をつくるスペースがない場合、アジアの他の国に大型リサイクル工場を作るなどの選択肢もあるはずです」

 なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、欧州ではレジ袋の無料化復活や、それに伴い、行き過ぎた反プラスチック運動が大きな混乱を及ぼしたとするバッシング報道も一部メディアでありましたが、一時的なものであると予想しています。

「研究者たちがマイバックでの感染の危険性は高くないと発表もしていますので、そのうち収まる問題だと思います。日本では今回のレジ袋有料化や、一部報道であった炭素税のように“お金が取られる”というイメージが強いですが、欧州では社会貢献につながるお金という認識があり、やがて自分たちにいい形で返ってくると、協力してくれる人が多いです」

 堅達さんの著書に関するお勧めのポイントは、ボイヤンさんのどんな困難があっても諦めない姿勢やポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム博士の提言の箇所だそうです。

「番組で放映しきれなかった第一線の研究者から聞いた話を、今回の本ではかなり詳しく紹介しています。私たちの置かれている状況がいかに危機的か、プラスチックと温暖化の両問題を扱って、全体がわかるという本は意外とないので、自分の知識として、また改めて環境問題を考えるきっかけとしてぜひ読んでいただければなと思います」

オススメ記事

21世紀には日本の6割の砂浜が消滅!? 重大な環境危機に直面している砂浜問題

SDGsフォーカス    2013年に『Sand Wars(サンド・ウォーズ)』というドキュメンタリー映画がフランスで公開されまし … 続きを読む»

「働き方」「職場環境」「多様性」 昆虫“アリ”の社会に持続可能な社会の答えがある? 人間が学ぶべきポイント

SDGsフォーカス    人類より遥か昔から優れた社会を形成している昆虫のアリ。そのアリを長年研究し、著書『アリ語で寝言を言いまし … 続きを読む»

企業は環境問題から逃げてはダメ! 経営・資金調達・人事まで関係するSDGs

SDGsフォーカス    ビジネスの世界で、「SDGs」「ESG投資」という言葉を頻繁に聞くようになった現在。株主や投資家の目は、 … 続きを読む»

「ゴミ清掃芸人」マシンガンズ・滝沢秀一 当事者だから感じる日本のゴミ問題、食品ロス、そして人生

SDGsフォーカス    太田プロダクション所属のお笑い芸人でありながら、週4~5日にゴミ清掃員として働いているお笑いコンビ・マシ … 続きを読む»

SDGsプラス独自目標を掲げる生活クラブ 自らの行動で安心・安全な「消費材」を生み出す!

SDGsフォーカス    生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(生活クラブ)は1965年、東京都世田谷区で主婦たちが牛乳の共同購入 … 続きを読む»

地元住民を主役に地域開発で叶えた南町田グランベリーパーク! 都市公園と商業施設が一体となった新しい街づくりの形

SDGsフォーカス    2019年11月13日、東急田園都市線の南町田グランベリーパーク駅(旧名:南町田駅)に、すべてが公園のよ … 続きを読む»

コロナ禍でさらに加速!? 地方移住に関する問合せ数は10年間で約17倍!「ふるさと回帰支援センター」地方創生の功績

SDGsフォーカス    2014年9月、政府は東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目 … 続きを読む»