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【SDGs担当者必見】

日本が挑戦する脱炭素革命 ライバル企業・世代を超えて取り組むべき気候変動問題

2022.01.06 (木)

 コロナ禍による1年の延期を経てイギリス・グラスゴーで、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が2021年10月31日~11月13日の期間に開催されました。今回のCOP26では、気温上昇に関する長期目標が事実上2度未満から1.5度に強化されたこと、さらに地球温暖化の最大要因として石炭火力削減方針が初めてCOP合意文書に明記されるなど、より強く、脱炭素社会に向けたメッセージが発信されました。
 

中小企業はどのように脱炭素化を推進していけばよいのか!?

 
 そのCOP26の開催より少し前、脱炭素向けた試みや現在の潮流に注目して解説する本が出版されました。それは『脱炭素革命への挑戦』(山と溪谷社)です。著者は、NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサーの堅達京子さん。実際にCOP26の現地取材も行った堅達さんは、今の日本の動きをどう感じているのでしょうか?

 

 今回の著書で特に注目すべき点が、企業の脱炭素化に向けた活動や試みです。ESG投資やソーラーパネル、風力発電機など、直接クリーンエネルギーに関わる投資や事業の話だけではなく、国内の有名企業の活動なども紹介されています。その中でも印象的なのが、これまで、温室効果ガスの抑制が難しいとされていた、航空業界での動きです。この項目ではSAFという略称で呼ばれる持続可能な航空燃料が出てきます。廃油や植物などを原料にした燃料で、10月には、日本の航空会社大手であるANA(全日本空輸)やJAL(日本航空)はSAFの開発・調達に向けた協力をしていくと表明しています。

「この本の執筆後に、ANAとJALが共同でSAFの開発をすると発表しました。現在では、2050年の脱炭素社会に向けて、業界のライバル同士が垣根を超えて知恵を出し合う状況に変化しています。政府より高い目標を掲げている企業も多く、7月に政府が発表したエネルギー基本計画では、2030年度の再生可能エネルギーの導入目標を36~38%と定めましたが、ビジネス界から逆に40~50%の目標にするべきだと声があったほどです。自動車、船舶、飛行機、製造、化学、小売りなど様々な業界の方々を取材しましたが、イノベーションを起こさないと脱炭素社会は達成できないという意識は、企業側の方が強いと感じています」
 

 
 著書では主に、大企業の活躍や挑戦がクローズアップされていますが、中小企業はどうすべきなのかも気になるところです。大企業は中長期的な投資が可能ですが、中小企業にとっては、予算だけでなくマンパワーも不足しているだけに厳しい課題です。

「個人的には中小企業も参加できる仕組みを作るべきだと思います。例えば、目標を達成した企業には、資金面で優遇があるなどです。実施に対してのインセンティブが必要で、税制や規制、補助金などの仕組み作りを行政側が整えてあげないと、スピーディーに事には当たれないと思います」

 仕組み作りや法律の改正などは、行政のタスクになりますが、主役はむしろ民間であるあるべきというのが堅達さんの考えです。

「脱炭素への取り組みに関して、主役は政府ではなく、民間にあります。民間はスピード感を持っているので、課題が出てくれば異業種同士のアライアンスがすぐに構成できます。ライバル関係にあっても知恵を出し合うアライアンスは、国際的なスタンダードになってきています。大企業はもちろんのこと、中小企業同士で協力することで、お互いの良い部分を吸収しながら、脱炭素化を推進していくべきだと思います」

 気候変動や脱炭素への課題が、企業で働く人々にも浸透していくにつれて、SDGsという言葉も広く知られるようになりました。著書の中でも問題に取り組む「個の力」の重要性が記載されており、堅達さんは「今後はひとりひとりの意識が重要になってきます」と訴えます。

 

 気候変動問題に関しては、時が進めば進むほど影響が大きくなると言われています。欧州では、環境問題に対して若者たちのデモ活動などが目立ちますが、日本ではまだそういった活動は多くはありません。日本と欧米の若者の間には、どんなギャップがあるのでしょうか。
 

▲気候変動の危機を訴える若者によるアクション「Fridays For Future」をはじめ、声を上げはじめた若者たち。写真は「学生気候危機サミット」の様子
 
「欧州や日本で何が違うのかと考えると、やはり教育に行きつきます。欧米では、答えを見つけていくディスカッション形式の授業で学習していきます。その授業の中では、様々な社会問題を考えるディスカッションもあり、当然、政治に関しても含まれています。日本では、そのようなディスカッション形式、いわゆる自分たちで考える授業は少なく、詰め込み型の教育に比重が置かれています。また、英語を苦手としている日本人は多いと思います。気候変動に関わる最新の報告書や研究結果は、英語で発表されている傾向があるので、一部の日本人しか情報が届いていないのです。これでは、なかなか正確な情報が拡散していきません」

 堅達さんが補足するに、実はニュースの為に翻訳された研究者の報告書や研究結果などは、断片的なものが多いそうです。若者の活動として、グレタ・トゥーンベリさんなどが欧州では有名ですが、そうした温暖化の弊害を訴えている環境活動家の声も、日本のメディアは断片的に切り取られた情報を取り上げられないことが多いそうです。

「気候変動問題というのは、世代間の公平・公正に大きく関わってくる問題です。私たち大人世代が豊かさを享受してCO2を排出して、環境破壊をしてきたツケを今の大学生の世代に負わせている構図になっています。まさに今の大学生くらいの年齢の若者が、これからの時代を生きていかなければいけない。大人以上に『私たちの問題なのだ!』と、声を上げて欲しいです。日本の学生は忍耐強すぎ、なのかもしれません。『仕方ないよな』モードにならず、自分たちの周りで異常気象が頻発する時代にちゃんと生活していけるのかを考え、科学者の話を聞いて下さい。今なら間に合います。しかし、すぐに手遅れになるかもしれません」
 

 
 COP26の日本といえば、前回のCOP25に続き、温暖化対策に消極的だった国に与えられる不名誉な賞「化石賞」を連続で受賞するなど、環境保護や温室効果ガス抑制を訴えるNGOなどへの心象は良くなく、国内でもCOP26での政府の消極的な姿勢にデモなどが行われました。この状態で巻返しは可能なのか心配になるところですが、堅達さんは、日本の力には期待しているようです。

「日本国内におけるコロナワクチン接種数の急激な増加を見てわかりますが、最初は出遅れていても、日本はあっという間に追いつく可能性があります。日本は、横並びで一丸となって取り組むことは得意なので、脱炭素がこれまで以上にトレンドになると、ものスゴい早いスピードで浸透・改革が進むと思います。あとは真面目な国民性なので、一度動いたら徹底して実行するという部分も強みです。脱炭素でもその動きが起きることを期待しています」

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