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聴覚障害者は276,000人 「手話言語」が社会進出の鍵!
お茶の水女子大学4年生 ガッキー
2018.09.22 (土)
耳が聞こえない世界 = 言葉が通じない国に一人で放り込まれるのと同じ感覚
▲お話を伺った嶋本さん。
両感音性難聴で生まれた時から100db以上の音を聞くことができなかったと言います。しかし、小さい時から手話言語に慣れ親しんできたのかと思いきや…。実はそうではなかったそうです。当時は「聞こえない」ことに対する人々の知識が不足していたこともあり、子供の頃は耳が聞こえる子供たちと同じように、手話ではなく「聞く訓練をすること、口形・口話で聞く」という教育を受けて育ちました。
そんな嶋本さんの手話言語との出会いは18歳の時。自分と同じく耳が聞こえない人達が手話を使用している姿を見たのがきっかけでした。当時、手話に対してあまりポジティブな感情を持っていなかったことから、自分から積極的に学ぶことはしなかったと言います。しかし、高校を卒業後、親元を離れて松下電器に入社した嶋本さんは大きな壁にぶつかります。
ある時、嶋本さんは上司から大変重要な資料を託されました。上司は渡す時に「これお願い。これコピー」と指示を出しました。しかし、嶋本さんはその口形から「これお願い。これゴミ」だと認識してしまったそうです。次の瞬間、嶋本さんは大事な資料をシュレッダーにかけて捨てしまいました。それを上司に報告したところ、上司の顔がみるみるうちに青ざめっていきました。口形ではゴミもコピーも似ていますが…。そうです。ゴミではなく、上司はコピーと言っていたのです。
当時のことを振り返った嶋本さんは、自分の意思疎通に限界を感じ「自分の人生はこのままなのか」と不安を感じたと言います。
「耳が聞こえない世界とは、言葉が全く通じない国に一人で放り込まれたような感じ。どれほど意思疎通が難しいか、想像してもらえると思います」
夢と希望の溢れる社会のために、手話言語をもっと身近に!
そんな時に、耳の聞こえない人たちが手話をしていたのを思い出したそうです。この時、それまで手話言語に対してネガティブな感情を持っていた自分を乗り越え、手話を勉強し始めることになります。そして、25歳でようやく手話を自由自在に使えるようになりました。
「この時初めて、自分の言いたいことが全部手話で言えるようになりました。そして、聞こえない人が今まで苦労してきたこと・手話通訳や聞こえる人に手話を理解してもらうための取り組みがあることを知りました」
このように語る、嶋本さんは現在、全日本ろうあ連盟の理事、WFDアジア地域事務局長としてご活躍されています。
「私の手話言語との出会いは遅かったのですが、聞こえない子供たちに夢のある人生を歩んで欲しいと思っています。だからこそ、もっと理解のある社会・聞こえない人たちが暮らしやすい社会にしようという活動をしています」
耳が聞こえる、聞こえないに関わらず、子供たちが夢と希望を持って暮らせる社会。そんな社会は少しの思いやりと気遣い、そして、ほんの少しその世界を知ることから始まるのではないかと思います。
人を呼ぶときに電気を点滅させたり、目覚ましのアラームには音ではなく、バイブレーションを使ったり…。手話通訳者を通して行われた今回の取材で、私は普段通り、インタビュイーである嶋本さんの前に座ろうとしてしまいました。しかし、そこは手話通訳者の手話が見やすいよう、この位置に座るのだと教えてもらい、私は嶋本さんの横に座り取材をさせていただきました。ちょっとしたことですが、そうしたことに気づくことが、誰もが暮らしやすい社会の実現への第一歩になるのではないでしょうか。
▲私も簡単な手話を教えていただきました!「ありがとう」
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