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21世紀には日本の6割の砂浜が消滅!? 重大な環境危機に直面している砂浜問題

2020.11.10 (火)

 
 実は海水浴や観光で訪れる砂浜も減少しつつあり、日本にある砂丘として有名な鳥取砂丘は、海砂利採集や治水工事に伴う河川からの砂の供給停止などで、その面積が減少していると考えられています。関東地方には九十九里や湘南、鎌倉など砂浜が有名な海岸地域もありますが、そういった砂浜も、侵食対策のために沖からの波の力を弱め、海岸の侵食を防止する離岸堤や水面下にコンクリートなどを沈めた潜堤、海岸付近に幅広い浅瀬をつくる人工リーフといった護岸工事によって維持されている場所が増えています。

「グーグルマップの航空写真で見ると、現在の砂浜や沿岸部地域がどういう状況なのかがよくわかります。離岸堤や、突堤を作って人工的なポケットビーチにして、砂の流失を止めようとしています。マップをみると、『あ、ここも、あそこもそうだ』ということになります。砂浜を残したいのであれば、今の離岸堤などでは対処療法でしかないということを自覚してもらわなければいけない段階にきています。持続可能な方向に持っていかなければいけません」
 


▲神奈川県茅ヶ崎市「ヘッドランド」

 


▲沖縄県名護市「ヘッドランドと人工ビーチ」

 
 こういった護岸工事は、漁港を守ることや、高度経済成長期に沿岸部に通した道路、そしてその道路が便利だからと沿岸にできた住宅地などを守るためにと広がってきました。古地図と現在の地図を比較して見られる「今昔マップ」を利用すると、昔の海岸線の変化がわかるそうです。

 地球の長い歴史の中では、過去にも海面が上昇した時期はありました。人間が手を加えていない河川や自然海岸が残っていれば、海面が上昇しても海岸線が内陸に移るだけです。しかし、今は海のすぐ近くに広がってしまった町や住宅をコンクリートの壁で守っているような状態なので、海面上昇すると、多くの海岸では砂浜は水没し、海水は護岸に直接打ち寄せるような状態になると考えられています。
 

▲鎌倉の海岸線(左は1896~1909年、右は現在)海岸沿いを通る道路部分は、昔の地図では砂丘がつらなっているのがわかる。「今昔マップ on the web」より

 
「昔、漁船を所有する網元の家は、意外と内陸にあり、海岸にあるのは作業小屋だったそうです。海岸沿いの住居が増えたのは、砂丘に道を通し、そこに人も集まってきたからです。しかしそこは、海からすれば、海の続きのような場所で、砂も飛んで来るし、ときには波もかぶるような場所だったりします。九州の豪雨などの影響で、今後は不動産業者が住む人にハザードマップ上のリスクを伝えなければいけないという決まりになりました。本当にそこに人が住んで危なくない場所なのかを見極める情報は増えてきています」

 また、日本の地理を学ぶことも、こういった問題を考えるうえでは需要になってくるそうです。

「最近の子供たちは地理教育を十分に受けていませんでした。点の取りにくい科目ということで地理・地学を学ぶ機会も、その科目で受験させてくれる学校も減少しているようです。地理や地学の基礎知識がないと、例えば、『海岸に道路を増やします!』という市長候補が立候補したとして、『それは本当に大丈夫なのか?』と考えることができない人が多くなってしまうのです」
 

海岸を見れば様々な環境問題が見えてくる

 
 海面上昇、気候変動、自然災害、海ごみ問題、海砂問題、水産資源問題、生物種の絶滅、生物多様性の劣化…。海岸に目を向ければ、今世界が抱えている環境問題がつぎつぎつながって見えてくると、志村さんは説明します。そして、島国の日本であればこそ、この海岸での問題を持続可能な社会に向けて、考えて解決していかなければならないと指摘します。

「昔、日本人は漁場という巨大な食糧庫をこの島国の周囲に持っていました。それが沿岸の環境改変によって漁獲量が減り、科学的な資源管理の理解が十分でないまま沖合や遠洋の回遊魚をとるようになり、その漁獲量も減ると今度は海外の魚を求めて買い漁るようになってしまいました。海はあいかわらず日本の周りにあるし、海の中は見えないのでわかりにくいですが、もう我々は海との付き合い方を見直さなければいけない時期に来ていると思います」

 志村さんは海岸の自然観察会などで子どもたちに向けて、楽しく学びながら問題を知ってもらう活動をしていますが、環境問題をはじめとする社会問題は常に新しい情報を元に判断していくことが必要になるので、子どもだけでなく、学校を卒業した後の大人たちこそが意識的に学び、問題意識を持ってもらいたいと話します。
 

 
 また学生に向けては、自然を知る活動をすることと、現在70代の方々に話を聞いてみることが重要だとアドバイスをいただきました。

「キレイな海で泳ぐ、川で泳ぐ。野宿キャンプなども、若いうちに体験してほしいと思います。その自然の中でどこまで生きられるか、地域の人たちはどういう生活をしてきたのか、地域の先輩の話を聞き、当時の生活を知る、そういうことも持続可能な社会を考える際にヒントになると思います。現在70代以上の方はギリギリ、薪を使いご飯を作ったりお風呂を沸かしていた世代です。エネルギーとは何か、どこから来るのか。プラスチック製品など使い捨て製品が増えたのはここ半世紀。プラスチックがない時代、『どうやって生活していたのですか?』と聞くだけでも貴重な情報になります」

公益財団法人日本自然保護協会

https://www.nacsj.or.jp

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