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東日本大震災から8年 被災者たちの現状を“おちゃっぺ会”を通して考える

国際基督教大学2年生 リサ

2019.03.11 (月)

 こんにちは! 豪田ヨシオ部インターン、国際基督教大学2年のリサです。


 2月16日(土)、東日本大震災で被災された方々の交流の場“おちゃっぺ会”を、文京区の光源寺で行いました。


 “おちゃっぺ会”は、東日本大震災の避難者・被災者を支援するための活動として、社会福祉法人・文京区社会福祉協議会によって2011年から始まった交流イベントです。


 2017年まで定期的に開催されてきた“おちゃっぺ会”ですが、被災者の方々がそれぞれの生活を歩み始め、役割を終えました。しかし、いまだ故郷に戻れない、特に高齢者の方のために豪田ヨシオ部は1年前に、文京区社会福祉協議会と協力し、同窓会を兼ねた交流の場として“おちゃっぺ会”を復活させることにしました。


「おちゃっぺ」とは福島県の方言で「おしゃべり」のことです。今回は、被災されている方々5名、学生6名、その他スタッフ3名、文京区社会福祉協議会の職員の方々3名の計17名がイベントに集まりました。こぢんまりとした、どこか懐かしく暖かい雰囲気のある“おちゃっぺ会”の様子をレポートしていきます。


 震災から8年経った今でも、なんと5万人を超える方々が避難生活を余儀なくされ、その中でも福島県から県外への避難者は約3万人とされています(復興庁調べ)。これまで、福島県では10市町村で避難指示が解除されていましたが、4月には大熊町の一部地区でも避難指示を解除するとの報道がありました。大熊町は、福島第一原発が立地する場所で、平成31年3月1日現在、人口は10,367人、世帯数は3,799数となっています。


 復興庁の「原子力被災自治体における住民意向調査」を確認すると、平成29年に避難指示が解除された富岡町の調査では、48.1%の人が「戻らないと決めている」(平成30年11月発表)、また福島第一原子力発電所の5号機と6号機が立地していた双葉町の調査では、61.5%の人が「戻らないと決めている」(平成31年2月発表)と回答しています。


 「戻らない」と判断している理由について、放射線の影響だけでなく、特に「医療・福祉施設の拡充」「商業施設の環境」など、コミュニティ再生のために必要不可欠な機能を指摘する声が多かったようです。


 仮設住宅の無償化が終了する市町村も増える中、被災者は改めて「帰るのか」「帰らないか」「その他の可能性」など、難しい選択を迫られています。震災から8年経った今、“おちゃっぺ会”に参加していただいた5人の方々が心境をレポートします。


それぞれが歩んできたあの日からの8年間 そして今後どうするのか

 今回お話をお聞きしたのは、東京に避難された5名の方々。メディアではなかなか報じられない被災者の胸の内を聞けるとても貴重な時間でした。


「病院と買い物する場所がなくて帰れない」


 南相馬市の小高区から東京に避難されたSさん。Sさんはもう3年近く地元に帰れていないそうです。もともとSさんが住んでいた小高区の人口は約1万3000人(平成23年3月11日)、しかし、現在の人口は約8000人。南相馬市では、2019年3月31日に仮設住宅の無償提供が終了することが決定していますが、震災の影響で破壊されたままの住宅、また生活に必要な施設も不足しており、帰る人は少ないのではないかとSさんは話していました。


 体が自由に動かせなくなってきたSさんにとって、病院やスーパーマーケットなどの施設は必要不可欠ですが、ゴーストタウン化が改善されることはなく、帰れない現状に直面しています。

 
Sさんは、“おちゃっぺ会”で出会った方と未だ連絡を取り合い、近況報告を行なっているそうです。
 

 Sさんと同様に、南相馬市の原町区から東京に避難されたYさんも帰れない現状に直面しています。Yさんの場合、住む家はあるためいつでも帰ることは可能です。しかし、体調が悪くなる一方で、公共施設や病院に通うことができない被災地に帰ることは今のままでは不可能だとのこと。

リラックスして話すYさん。

「8年たってようやく話せます…津波から逃げ回った2日間でした」

 

 いわき市の四倉町から東京に自主避難してきたTさん。自主避難してきたこともあり自分の過去を話すことを8年間ためらってきました。今回の“おちゃっぺ会”でようやく胸の内を話してくれました。


 Tさんは震災直後、津波が心配で2日間も車で逃げ回ったそうです。マンホールから水が噴き出し、水道管は崩壊。恐怖のあまり丸2日間眠ることはできませんでした。2日間逃げ回ってようやく家に帰宅するものの、自宅周辺には人っ子ひとりいませんでした。いわき市はたったの2日間で“ゴーストタウン化”してしまったのです。


 「その時がきたらここで死のう」そう決意したTさんでしたが、息子さんからの電話で自宅から避難することを決心しました。しかし、避難先でTさんとそのご主人は別々に生活することになり、つらい日々を送ったそうです。


 四倉町で旦那さんとともに家庭菜園をしていたTさん。しかし、原発・津波の影響で土がダメになり畑を耕すことができなくなった今、帰ることは考えていません。


「オリンピックが終わったら、家を建てて帰ろうと思っています」

 
富岡町に帰ることを決心したKさん。
 

 富岡町から東京に避難してきて現在、神楽坂に住んでいるKさん。東京に住んで8年が経とうとしている今、富岡町に帰ることを考えているそうです。  新しく自宅を建て、家庭菜園を営みたいと思っていますが、Kさんの奥さんは東京に永住したいらしく意見が分かれているみたいです。ずっと富岡町に住んでいたこともあり、田舎のほうが住みやすく早く自宅を建てて、帰りたいと語っていました。また、震災前の富岡町のことを「華麗で、夢のような街だった」と懐かし気にかたるKさんが印象的でした。

 

被災者から話をきいて学生たちは何を感じたのか

5名の被災者からのお話を伺って感じたことを、イベント終了後に学生にインタビューしてみました。


豪田ヨシオ部インターン生 リン(法政大学2年)

「時が経つと東日本大震災のような災害を経験した人が減り、”悲惨だった”という事実は知っていても、どんな思いでその人たちは生きてきたのか。どんな思いをしてきたのか。ということを知る機会や聞く機会が減ってきてしまいます。そんな中、この“おちゃっぺ会”で東日本大震災を経験した人の色々なお話を聞き、分かる場所があるというのはとても貴重な機会だと感じました」


Tさん(中央大学2年)

「東北大震災が発生したときは、まだ中学生でした。東京出身ということもあり、被害は少なかったものの、ずっと被災地のために何も行動することができず悩んでいました。今回“おちゃっぺ会”に参加して、震災の悲劇を風化させてはいけないと強く感じました。ここで得た情報をほかの学生に伝えていきたいと思います」


Oさん(拓殖大学4年)

「これまで様々な活動に参加したのにかかわらず、まだ知らない情報があった。まだメディアを通じて流れてきていない情報があったことに驚きました。メディアからも東日本大震災の情報が発信される機会が減る中で、“おちゃっぺ会”のようなイベントに参加して自ら学ぶことの大切さを学びました」

 
会の後半では、昨年に書いた“1年後の自分自身に宛てた手紙”を開封。みなさん、笑みが溢れていました。
 

私たちができることは何か

 

 東日本大震災から8年が経ちました。”おちゃっぺ会“に参加された方々は、様々の葛藤の末、前に進もうとしていました。震災の影響を受けなかった私にとって、あの日からの8年はあっという間で、何の変哲もない時間でした。しかし、被災者にとっての8年はとても濃く、今もなお、脳裏に焼き付いたあの日の記憶に立ち向かいながら生活なさっているのではないでしょうか。


 また、東日本大震災の悲惨な出来事が風化されつつある今、私たちがイベントを通して得た情報を、“被災者の生の声を添えて”発信することで、今後の教訓にできるのではないかと信じています。


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