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「SDGsとPONYリーグの関連性」元プロ野球選手・広澤克実氏を直撃! 社会貢献への想いが強くなったカンボジアでの現実

2021.06.07 (月)

 日本でも大人気のスポーツである野球。プロ野球、大学野球、高校野球、少年野球などのカテゴリーがありますが、PONYリーグというカテゴリーの野球をご存知でしょうか!?

 PONYリーグは、一般的な野球カテゴリーとは異なる「理念」を掲げており、「SDGs」にも共通する内容を定めています。

 そこで豪田ヨシオ部は、ヤクルト・巨人・阪神で活躍した元プロ野球選手で現在、一般社団法人「日本ポニーベースボール協会」の理事長を務めている広澤克実さんを直撃してきました!

 PONYリーグは、1950年秋にアメリカで誕生し、13才〜15才(中学生)を対象とした硬式野球リーグです。現在、世界60カ国でPONYリーグが運営され、日本では1975年に日本・ポニーリーグ野球協会が結成されました。現在は名称が変更され、日本ポニーベースボール協会がリーグを運営しています。
 

 
 主な指導理念(全部で10項中、5項目を掲載)

●ポニーの指導者は代償を求めてはならない
●ポニーの指導者は暴力を排斥する
●手段と目的を混同してはならない
●ポニーはグラウンドでも会合でも「機会均等主義」である
●選手は自分の所有物ではない

 上記の理念を元に、2020年には「SUPER PONY ACTION 2020」の要項がまとめられました。1試合の投球制限、怒声罵声のある指導と応援に対するイエローカード制の導入、野球道具の提供(SSK、株式会社大倉 全面バックアップ)子どもたちが見える場所でタバコ吸うのを止める喫煙場所の確立「吸わない、嗅がせない、匂わせない、見せない」、独立リーグ選手への奨学金制度、勉学を目的とした留学奨学金制度など、野球はもちろん野球外のシーンに対しても手厚い支援制度を確立しています。
 

▲PONYリーグの様子
 
 ちなみに同リーグは、数多くのプロ野球選手を輩出しているところもポイントです。楽天ゴールデンイーグルスの現取締役GM兼監督の石井一久さん、前巨人軍監督の高橋由伸さん、日本ハムファイターズ現監督の栗山英樹さん、2019年オリックス・バファローズにドラフト1位指名された宮城大弥投手などです。またメジャーリーグにおいても、アレックス・ロドリゲス、バリー・ボンズ、マーク・マグワイアなど超一流の選手を送り出しています。
 

日本は食べ物、道具、教育、医療、全ての環境が恵まれている

 
 今回、インタビュー取材を受けてくださった広澤さんは、明治大学の出身。大学の先輩から誘われて、2018年から日本ポニーベースボール協会の理事長を務めています。協会に携わる前までは、PONYリーグの存在自体を知っている程度でしたが、以前から「社会貢献をしたい」と考えていたそうです。

 その気持ちがより強くなったのは、2011年に野球カンボジア代表のコーチを務めたことが影響しています。

「実際にカンボジアに行って、価値観が変わりましたね。夕方頃に球場で電話しようとして、二つ折りの携帯を開けると、虫が携帯電話の光に沢山集まってきたり、カップヌードルを食べようとして蓋を開けたら、ハエがたくさん集まって来るんでするよ。トイレも紙がなくて水でお尻を洗わなくちゃいけなかったり、大変でした」
 

▲当時、広澤さんが子どもたちに指導していたコンポン・トム球場
 
 カンボジア代表に所属している選手の多くは、10代半ば〜20半ばで農家の子どもたち。練習場にはトゥクトゥクやオートバイをヒッチハイクしながら向かい、食事に関してはお米を持参し、練習が終わると近くの川へ魚を獲りに行き、その場で調理して食べていたそうです。

 もちろん、自分のスパイクやグローブ、バットを持っている選手はほとんどおらず、裸足で練習していたそうです。
 

▲カンボジアのトゥクトゥクのイメージ
 
「ナショナルチームで、練習の後に料理を自分で調理するなんてありえないでしょ!? 日本だったら栄養士が管理して選手の身体を作る。それがナショナルチーム。カンボジアで子どもたちの生活を目の当たりにして、やっぱり日本の環境は恵まれていると思いました。食べ物、道具、教育、医療、全て恵まれていますよ」
 

PONYリーグ最大の特徴は「リエントリー制度」

 
 カンボジアでの体験を経て、日本ポニーベースボール協会の理事長を務めている広澤氏に、数あるPONYリーグのルールの中で、特徴的なことをピックアップしてもらいました。

「なかなか、一つに絞ることは難しいですが、“誰でも試合に出られること”ですね」

 広澤氏が強調するように、PONYリーグの最大の特徴と言っても過言ではないルールが、「リエントリー制度」です! 一度交代した選手でも再度試合に出られるというルールで、“1人でも多くの子どもを試合に出させる”という目的があります。一般的な野球カテゴリーのルールでは、一度交代してしまうと、試合には戻れません。

「上手い選手は試合に出場し、下手な人は試合に出られない。それが当たり前だと思っていました。高校の部活でしたら、下手な選手は、3年間ボール拾い、グラウンド整備、先輩の御用聞きで、高校野球生活が終わる。プロ野球だったら、クビになって辞めていきます。それが普通だと思っていました」

 これまで広澤さんがいた野球の環境とは、まったく違う理念や活動を行っているPONYリーグ。理事長を務め、深く関わることで、これまでの価値観が覆ったそうです。

「野球は試合に出場しないと上手くはなりません。良い経験も悪い経験もして、初めて上手くなる。例えば、中学生の時点で強豪チームに入ってしまったら、もしかしたら、ベンチにも入れずに3年間野球活動が終わる可能性もあります。やはり試合に出られないと、人の目にも留まらないんですよ。試合に出るから、チャンスが生まれるんです。ポニーリーグのルールは、誰でも等しくチャンスが与えられているんです」
 

▲試合に出られることの喜びを実感しながらプレーするPONYリーグの中学生たち
 
 広澤さんがここまで熱く語るのは、実際にそのようなプロ野球選手を見てきたからです!

 まず、名前を上げたのが現ヤクルトスワローズの監督を務める高津臣吾氏だった。広澤氏と高津氏は、共にヤクルトスワローズの一員として活躍し、野村克也監督時代の1993年に日本一を獲得。その後、メジャーリーグのシカゴ・ホワイトソックスに移籍し、2005年にはMLBのチャンピオンリングを獲得しました。

「高津って、高校時代はエースではなく、亜細亜大学でも2番手のピッチャーで、ずっとエースじゃなかった。アンダースローのピッチャーということが特徴的だったから、野村監督がドラフト指名したそうです。それが最終的にメジャーリーガーになるんですよ!? 驚きますよね!?」

 また、現ヤクルトスワローズで日本プロ野球史上唯一の2度のシーズンで200本安打を達成した青木宣親選手についても触れました。

「当時、各球団のスカウトは、鳥谷敬選手(元・阪神、現・千葉ロッテマリーンズ)をチェックしに球場に来ていたのですが、偶然、外野を守っている足の速い選手をヤクルトのスカウトが注目し、青木選手はドラフト4位でヤクルトに入団したんです。試合に出場していると、誰かの目に留まる可能性があるんです。本当に何が起きるかわからないんです」
 

野球を活用して社会に有益な人材を育てる!

 

 
 最後に、広澤さんは改めて、PONYリーグのポイントを上げてくれました。

●みんなが等しく試合に出られること
●みんなが等しく道具を持てること
●最後まで夢を追い続けられること

 SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」という理念と非常に近いです。

「SDGsの項目は17個ありますけども、全部私が関われるかは、ちょっと難しいので、ポニーと関連性のある3つほど挙げさせてもらいました。野球を活用して社会に有益な人材を育て上げようっていうのが、ポニーのもともとの理念です。それは、当然SDGsを達成するためにも優れた人材が必要だと思います」

 そして、大学生にもメッセージを贈りました。

「『よく努力しなさい』って言われますよね!? “努力”って『歯を食いしばって頑張っている』イメージがします。でも、“夢中”は、すごく楽しそうですよね。好きでたまらない情熱は、何事にも勝るような気がして、それが夢中だと思っています。大学生にもなると、実は夢中になれるものに出会っている可能性は高いと思いますよ」

 みんな、一人一人に夢中になれるものがあります。SDGsのジャンルにおいても自分に合った分野を選べれば、夢中になって取り組めるはずです!!

一般社団法人「日本ポニーベースボール協会」

https://pony-japan.com

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