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東京レインボープライドの季節! 男らしさ、女らしさって何かしら?

豪田ヨシオ部 西園寺菫子

2018.04.27 (金)

 

“らしさ”や悩みは人それぞれ。否定や嫌悪からは何も生まれないんじゃないかしら。

 
「男らしい男に惚れる」と言うAさん。言い訳をしない、潔い、誠実といった言葉がAさんの“男らしさ”のイメージなんだそうです。「この前、福岡出身の友人に、『九州男児のくせに、都合の悪いことを隠したり、だんまりを決め込むんじゃねぇ。女々しいぞ』って怒鳴ってしまいました。反省です(ペコリ)」とAさん。

 へー、けっこうステレオタイプな“らしさ”観ですね。でも、私も「西園寺さんって、サバサバしていてハンサムウーマンね」なんて言われると嬉しくなります。それも“らしさ”の固定観念の裏返しなのかな。“女々しい”とか“女の腐ったやつ”とかは言うけど、“男々しい”“男の腐ったヤツ”という言葉は無いもんね。
 


▲これがAさんの“男らしさ”のイメージ? まあ、一つのテンプレートして承っておきましょ(写真は博多祇園山笠)。

 
 Aさんの若い友人にトランスジェンダーのCさんがいます。Cさんは就活の時期を迎え、何を着て行こうか、パンプスを履くかどうかって悩んだそうです。Cさんは高校生の時、学校に働きかけて、スカートかズボンか女子が制服を選べるようにし、「似合ってる」と友人から言われたことが嬉しかった。でも、周囲からは励まし、からかい、いろんな声もあって、「LGBTのどれかに分類されなくちゃいけないのか。世間の視線をかく乱して生きてやるぞ」と思うようになったのだそうです。

 もう一人、Aさんの若い友人Dさんは、性自認は男性で、恋愛対象は女性ですが、可愛らしいもの、美しいものが大好き。「分類するとオトメンってことになるんでしょうけど、彼はオシャレでよくアドバイスしてもらっています。さっぱりした男気もあって素敵なヤツです」とAさん。
また出た、Aさんの男気論はちょっと気になるけど、“分類”ってものには、ちょっと要注意かなって気がしてきました。

「僕はGですけど、LGBTという分類には、僕らに貼る商品ラベルかって思う時もある」とAさん。ゲイカップルは、DINKs(Double Income No Kids)=共働きで子どもを持たない夫婦と同じように、可処分所得が比較的高い世帯とマーケティングされているんじゃないかってAさんは言います。そういう見方もあるんですね。

「僕もそうだけど、CさんやDさんも『理解できない』とか、『LGBT、セクマイの人って、なんか面倒くさい』と言われることもありますね」とAさん。
知らないことを理解するって簡単なことじゃないですよね。人って、自分と同質のものと異質のものを分けて、異質を排除することで安心する面があるかも。でも、否定や嫌悪からは何も生まれないんじゃないかなって思います。

“らしさ”や“分類”は実は曖昧なものかもしれないと思った私は、ヒントになりそうな映画をAさんと一緒に観に出かけることにしました。

 

私たちの性は曖昧でカラフルかもしれない~映画を観てわかったこと

 

▲『恋とボルキア』(左)と『ナチュラルウーマン』(右)を観て、いろいろ考えました。

 
 まず観たのは『恋とボルバキア』(小野さやか監督)。
ただオシャレがしたくて女装を始めたら、いつの間にか男の人に恋をしていた。カッコイイ女の子に一目惚れしたら、彼女は実は男性で、私は女で…。結婚式の時、妻のウエディング姿が羨ましくて、3人の子どもの学費を稼ぎながら女装することで心が解放される父親など、5組のストーリーが展開するドキュメンタリー。ボルバキアとは宿主を性転換させる共生バクテリアの一種で、20世紀初めに発見されたそうです。

 みんなちがって、みんないい、ってみんな言う──この映画のキャッチコピーは的を得ていると私は思いました。「“みんなちがって、みんないい、ってみんな言う”けど…」ってことですよね。そうは言うけど、ツライこともあるし、心がヒリヒリ、ドキドキするってことが伝わってきました。

「僕は、生物学者の福岡伸一先生(青山学院大学教授)が、この映画に寄せたコメントにハッとした」とAさん。先生は「性同一障害は本当は障害じゃない。なぜなら性別はサピエンスが作り出した虚構にすぎないから。この映画は、その虚構に迷い込んだ正直な人々の物語」と話しています。

 私たちの性は、実はとても曖昧でカラフルで混沌としていて、恋や夢、幸せの形も生きづらさも限りなく多様なものかもしれないと、この映画を観てあらためて思いました。

 もう1本は、チリの首都サンティアゴを舞台にした『ナチュラルウーマン』。最愛の人を突然失った主人公・マリーナが、トランスジェンダーであるために、ふたりで暮らしていた部屋から追い出され、葬儀にも参列できない。理解者もいる一方で、「目の前のあなたのことがわからない。モンスターのように見える」と、不躾で容赦のない差別の言葉や視線が、男性からも女性からも投げつけられます。

「僕は、ヒロインを演じたダニエラ・ヴェガという女優自身もトランスジェンダーの歌手であることが嬉しかったな」とAさん。ヒロインは、最愛の人に別れを告げたいだけなのに許されない。理不尽な現実を乗り越えて前を向いて歩く姿は、いろいろな苦しい状況や立場にある人を励ましてくれるんじゃないでしょうか。

 映画だけじゃなく現実にも、「僕がゲイだと自己紹介したら、『私を叱ってください』と言った女性がいました。ゲイ=バラエティ番組で見る毒舌オネェキャラと思う人が未だにいるんですね」とAさん。Aさんの友人のCさんは「早く手術したら?」と無神経な言葉を浴びせられ、Dさんは「ゲイ、オネェとどこが違うんですか?」と質問されることが多いそうです。

 4月28日(土)~5月6日(日)は「東京レインボープライド2018」ウィーク。男らしさ、女らしさ、多様性って何かしらと考えるヒントに、私もAさんと一緒に参加してみたいと思います。

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