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企業ではなく「自分」が主役! 転職を念頭に置いた「タイ」の就活スタイルとは…

お茶の水女子大学4年生 ガッキー

2018.10.19 (金)

ジョブホッピングでキャリアアップを図る働き方?! タイ人のキャリアパス事情

 
 経団連の中西会長が「就活ルールを廃止する」と発言し、10月9日に正式に廃止が決定した「就活ルール」。現在は、経団連が就活の情報解禁日を3月1日、面接解禁日を6月1日と定め、それに則って企業(経団連加盟関わらず)が採用を行う「新卒一括採用」が一般的ですが、タイでのキャリアパスはどうなっているのでしょうか。

 日本では大学3年生頃から「インターンシップ」を行う学生が増え、その時期からだんだんと卒業後の将来の進路について考え始めますが、タイの学生が進路について考え始めるのは大学4年生の時だと言います。また、採用方法も日本のような「新卒一括採用方式」はなく、「就活の時期」は決まってはいないようですが、本格的に卒業後の進路を決めるのは卒業前後になるそうです。ゲームさんは「タイ人はよく転職するから、ポストが空けば働けると考える」のが理由の1つになっていると説明します。このように、転職を繰り返す傾向は「ジョブホッピング」と呼ばれ、根底には転職をすることでキャリアアップをすることができるという考え方があるようです。

「2、3年位働いて、十分そこの会社で働いたと思ったら転職するのが一般的。一般的に転職したほうが『給料が上がる』という感覚があります。だから、お金やキャリアアップのために転職するのはタイでは当たり前で、私たちの世代だと一生に一度は必ず転職します!(笑)」

 

タイの豆知識① ジョブホッピングで失業率が下がる!?

▲パーソネルコンサルタントマンパワータイランド株式会社HPよりグラフ引用
 
日本では新卒採用者を「育てる」という企業文化がありますが、タイではそういった会社は珍しく「即戦力」となる労働者を求める傾向にあるようです。そのため、タイ人は転職を繰り返すこと(=ジョブホッピング)で、キャリアアップを図っています。ちなみに、ジョブホッピングの影響で直近10年のタイの失業率は1%前後で、「完全雇用」に近い状態にあります。

 

「就職当初から転職を念頭に就職をする」タイ人の考えと「新人教育体制がしっかりしていて、入社から退職まで勤め上げる」という考えが根強く残る点に違いがあると感じました。また、タイでは卒業後は就職するだけが一般的な進路ではないようです。
 
 ゲームさんが所属していたタマサート大学の就職事情を聞きいてみると…。

「私が在籍していた日本語学科の人は、進学か就職か悩むことが多く、4年生の後期に最終的な進路を決めてきていました。タイでは卒業後すぐに院進する人も多いです。それだけではなく、働きながら修士を取る人も結構います。タイ人の中では、学部の学位だけでは知識力が足りないという認識があり、経済的に余裕があれば院に行くのは当たり前です。確かに、卒業後すぐに就職もできますが、キャリアアップするためには修士号が必要だと感じます」
 
 ちなみに、株式会社AONの調べでは2016年のタイの転職率は16.3%で、2017年は16.6%に転職率が増加したと報告しています。また、その理由として「タイの経済市場が拡大していること、また最近の若者は職場環境が変わること寛容であること」との分析が出ていました。
 
 日本においては、総務省統計局の労働力調査によると、2016年の転職者数は約307万人で転職比率が4.8%という結果が出ています。一方で、タイでは「度重なる転職(ジョブホッピング)」が当たり前であり、その根底には「キャリアはアップさせるもので、自分の人生のゴールに近づくために転職し、転職をすることで給与もアップする」という意識があるように感じました。

 

タイの豆知識② タイの平均月収は?

▲(Wow Thailand)
 
タイ統計局が2017年上半期にタイ国内約2万6千世帯で行った調査によると、タイ全土の家計所得の平均は約10万円(約37,000バーツ)です。バンコク首都圏の家計平均所得は約13万円(約41,000バーツ)になるとのことでした。

 
 転職の話が続いたので、タイで人気の職業についても伺ってみました。ゲームさんによると理系ではエンジニアリング、文系ではCAは人気な職業なのだそう。最近は企業で勤めながらの起業や、学生起業家も人気があるそうです。

「日本の就活」と「タイの就活」スタイルには様々な違いがあることがここまでのインタビューで明らかになってきましたが、在日歴3年目のタイ人、ゲームさんは日本の就活スタイルについてどのように感じているのか聞いてみました。

「日本の『就活のスタイルや時期が決まっている点』は安心感があり、羨ましいですね。でも、みんなが同じ行動をし過ぎていたり、転職したくても『企業に申し訳ない』と感じ転職に踏み切れない日本人もいるようですが、その気持ちはよくわかんないですね。(笑)自分がやりたい、この道を進みたいと思うことをもっとやっていった方がいいんじゃないかな、と思います」

 

タイの豆知識③ タイの最低賃金は?

▲(Bangkok Post 2017)
これは県別に最低賃金が色分けされた地図です。バンコク首都圏(オレンジ色)など限られた県のみが310バーツ/日(日本円換算で、約1100円)以上で、大半が305バーツ(約1000円)となっています。また、特にタイ南部で最低賃金が低いことが読み取れます。

 

 これまで話を聞いてきて、日本人と比べタイ人は将来のキャリアゴールを明確に持っている印象を受けました。

「転職ありきで就職するので、自分でキャリアを選択するという意識が強いかもしれないですね。最終的に大体の人が、最初に立てた第一ゴールに近いところに到達している気がします。私も最初は日本語学科を卒業して、そのままお茶の水女子大学に進学したかったのですが、倍率も高くちょっと難しくて。だから卒業後はまず日本の銀行の営業職として3年半くらい働きました。その後会社を辞めて、日本政府の奨学金の試験に合格したので、現在お茶の水女子大学で学んでいます」

 このように語るゲームさんの将来のキャリアについて伺うと、「お茶の水女子大学の修士号取得後、そのまま、お茶の水女子大学に進学して博士号を取った後、タイの大学で教鞭をとりたい」との夢を語ってくれました。
 

 

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